研究課題/領域番号 |
19K02810
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
古家 貴雄 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (30238696)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高等師範学校 / 高等師範学校附属中学校 / 機関誌『中等教育研究』 / 附属中学校での教育実習 / 新教授法 / H.E.パーマー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は2つある。1つは、戦前の英語の教員養成機関における教職的教養教育の実態を明らかにすることであり、2つ目は、特に東京高等師範学校附属中学校の英語に焦点を当てそこの英語教育システムやスタッフの英語教育観や英語教授法観、または、附属中学校での実践の状況を調べること、3つ目に、当師範学校の卒業生のその後の動向を調査する中で、附属中学校の英語教育界における人材輩出の影響力を評価し、そこでの教職教養教育の効果を精査することである。本年度は、第1番目の研究を主に行い、少し2番目の目的の領域にも入った。まず、第1番目の研究については、明治、大正、昭和の3つの時代を通じた教員養成のための目的学校の1つ高等師範学校(東京と広島)の教職的教養教育の実態について、そのような能力を両校では、英語教授法の授業と教育実習の両方で学生に教職的教養教育を提供していることを明らかにした。そしてまた、それら教授法の授業と実習の任を負っていたのが、附属中学校の教員であった。東京高等師範学校の附属中学校においては、附属中学校の教員が高等師範学校に出向して教授法について学生に教授をしたが、そこでの教授法の内容は、附属中で行っていてパーマーに奨励されていたダイレクト・メソッドであった。附属中の教員はこの指導法を自分たち用に改良し、新教授法と名付けた。このように、今年は、高等師範学校の英語教授法の授業の内容についていくつかの事項を明らかにした。これについて過去に明らかにした論考はないので意味がある。さらに、附属中学校で研究用に発刊している『中等教育研究』を集め、その内容を分析する中で、附属中の教員が4技能や中学校の初年次教育その他、多様な分野に置いて理論と実践の両面から研究している実態を明らかにした。彼らの英語教員としての有能性を明らかに出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、①戦前の英語の教員養成機関における教職的教養教育の実態を明らかにすること、②特に東京高等師範学校附属中学校の英語に焦点を当て、そこの英語教育システムやスタッフの英語教育観や英語教授法観、または、附属中学校でどのような実践したのかを調べること、③当師範学校の卒業生のその後の動向を調査する中で、附属中学校の英語教育界における人材輩出の影響力を評価し、そこでの教職教養教育の効果を精査することであるが、①については、ほぼ研究の概要を捉えることに成功した。②については今年は途中まで研究を行った。まず附属中学校の研究誌『中等教育研究』をある程度集めることが出来、その内容分析をすることができた。この中で、英語教員としての彼らの優秀な面をいくつか明らかにしたが、その証拠として、昭和期に赴任した東京高等師範学校の教員の半分以上の者が、過去のキャリアとして附属中学校からその職についたことを明らかにした。ある教員は、附属中学校の教員時代に岡倉天心の『茶の本』を日本語に訳し出版する者もいた。今後、さらに当研究機関誌を読み進めることで、当附属中学校において、パーマーの教授法を改良した新教授法がどのような英語教育教法観の元に成立したのかを明らかにしたい。また、一方で、なぜパーマーのオリジナルの方法を附属中で援用しなかったのかの理由も探ってみたい。なお、附属オリジナルの教授法を当校に導入したのは、岡倉由三郎(天心の弟)であったが、彼はヨーロッパ留学の成果としてその教授法を附属に導入し、実際に本人が教えたこともあったことも明らかになった。ただし、その後、岡倉とパーマーは意見が合わなかったという。そこも新教授法の誕生に関係があるのかもしれない。ここまで新教授法の状況を明らかに出来た。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は2年目であるが、本年度は、さらに附属中学校の教員の英語教育観、英語教授法観を明らかにするために、機関誌『中等教育研究』の読み込みを進めたいと思う。まずは、彼らが当時問題としていた英語教育の課題に切り込みたい。その1つはおそらく、初年次教育の問題であると思う。音声から入り、それをどのようにして高度な技能にしていくか、その方法論が大きな課題であったと思う。次に、さらに当校の新教授法についての考察と、その教授法が教育実習生にどのようの実践指導として伝えられたのか、を究明してみたい。そのためには、実習生の研究授業の様子や指導助言を記した資料を探さないとならないだろう。今年度は続けて、附属中学校における教育実習の状況にも研究を進めて行きたい。実習の状況が現代の実習の状況とどのように異なるか、あるいは類似点はあるかを明らかにしたい。つまり、高等師範学校のスタッフと附属中学校のスタッフとが学生の教育、特に教員養成に関し、どのような共通理解を持ち、実際に実習、特に研究授業と研究会において協力関係を築いていたのか、ということである。最後に、来年度の研究として予定している、附属中の教員の実践的指導を受けた高等師範学校の卒業生たちが、卒業後、中学校に赴任をして、どのような実践を行ったか、を調べていきたい。これは、高等師範学校附属中学校、高等師範学校の教員養成方法がその後の中学校の英語教育にどのような影響を与えたのかを明らかにすることが目的である。これにより、3年間の研究の結論を導き出す研究に進んで行きたい。なお、研究遂行上の課題として、昨今のコロナウイルス渦により、研究成果を学会等で発表出来ない、ということがある。成果の公表の方法を今後、模索して行きたい。
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