研究課題/領域番号 |
19K02812
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
山田 康彦 三重大学, 教育学部, 特任教授(教育担当) (30220411)
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研究分担者 |
森脇 健夫 三重大学, 教育学部, 教授 (20174469)
根津 知佳子 日本女子大学, 家政学部, 教授 (40335112)
赤木 和重 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (70402675)
中西 康雅 三重大学, 教育学部, 准教授 (00378283)
大日方 真史 三重大学, 教育学部, 准教授 (00712613)
守山 紗弥加 三重大学, 教養教育院, 特任講師(教育担当) (50701439)
前原 裕樹 愛知大学, 経営学部, 准教授 (00755902)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 教員養成PBL教育 / 対話的事例シナリオ / PBL教育評価 / コンセプトマップ / アクティブ・ラーニング |
研究実績の概要 |
本研究では、対話的事例シナリオを核としたPBL教育のカリキュラム開発、および評価方法の開発研究の2つを目的としている。3年間の研究の1年目の令和元年は、1)対話的事例シナリオのさらなる開発を進め、それを核としたカリキュラム、とりわけ教員養成授業科目のベストミックス(最適カリキュラム)案を開発し、2)評価方法としてコンセプトマップを実験的に導入し、その意義を第一次的にまとめた。 それをふまえ、研究の2年目としての令和2年度の研究実績は、以下の2点にまとめることができる。 1)開発した授業科目のベストミックス(最適カリキュラム)のモデル化を図り、複数大学(三重大学、神戸大学、日本女子大学、愛知大学など)において追試、検証を行うことができた。このモデル化は、対話的事例シナリオとカリキュラム全体との有機的関連性を考慮して構造化を図るものだった。これら最適カリキュラムは、教育方法論、教育課程論、教育技術論、特別活動論、特別支援教育などの教員免許法に関わる教職科目と、音楽科、技術科、図画工作・美術科などの教科専門科目、さらに保育内容「表現」や福祉といった福祉系の専門科目にも及び、計11科目のモデル化とその追試、検証を行うことができた。 特に令和2年度でのカリキュラムの開発とモデル化に当たっては、コロナウィルス感染拡大の中で長期間実施されたオンライン授業での新たな内容と方法を加えることができた。 2)上記の最適カリキュラムを評価する方法として導入したコンセプトマップについては、モデル化した11科目のすべてで実施することができた。そのことによって、その複数の方法を実施することができ、それぞれの違いを検証するとともに、その評価方法としての特徴を明確にし、1年目に第一次的にまとめた3つの意義を確認すると同時に、課題も明確にすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の柱は、対話的事例シナリオを核としたPBL教育のカリキュラム開発と、その評価方法の開発研究の2つである。3年間の研究の1年目(令和元年度)は、当初の研究計画通りに、1)対話的事例シナリオの開発と、それを核としたベストミックス(最適カリキュラム)開発を進め、その案を作成した。そして2)評価方法としてコンセプトマップを実験的に導入し、授業評価の検証ツールとしての意義を第一次的に示すことができた。さらに3)研究代表者及び研究分担者間で、毎月1回研究会を実施するなど、研究推進のサイクルを確立することができた。 研究の2年目の令和2年度は、コロナウィルス感染拡大の中で一定の制約があったものの、「研究実績の概要」で示したように、研究計画に添って進めることができた。具体的には、1)教職科目および教科専門科目を中心に11の教員養成授業科目のベストミックスのモデル化をはかり、複数大学(三重大学、神戸大学、日本女子大学、愛知大学)において追試、検証を行った。 また2)評価方法として導入したコンセプトマップについては、モデル化したすべての科目で実施し、その精緻化を図ることができた。その結果、コンセプトマップの用法として、① 学習者自身の自己評価 、② 指導者側から見た学習者理解と学習到達度の評価、 ③ 学習者の学習ツール、という3つの活用方法があることを明らかにでき、さらに学習者の学習実感の醸成など、カリキュラム評価方法としてのその特質も明らかにすることができた。 これらの研究成果は、令和3年3月17日に開催された第27回大学教育研究フォーラム「参加者企画セッション」で公表した。 コロナウィルス感染の拡大によって、訪問調査、定期的な研究会、学会発表は対面では実施できなかったが、すべてをオンラインで実施することによって、上記のように計画通りに研究を順調に進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」と「現在までの進捗状況」に示したように、3年間の研究の2年目を終えて、研究は計画に沿って順調に進めることができた。令和2年度までに、研究の柱の1つである対話的事例シナリオを核としたPBL教育のカリキュラムの開発は、そのベストミックス(最適カリキュラム)の開発とモデル化を図ることができた。そこで特に今後の課題となっているのは、対話的事例シナリオとカリキュラム全体との関係を明確にすることである。開発されたカリキュラムによって、少数の事例シナリオが核になったカリキュラムと、多数の事例シナリオによって構成されたカリキュラム、さらには事例シナリオ教育とプロジェクト型PBL教育の両者によって構成されたカリキュラムなど、異なる構成が生まれている。それらの特長を生かした理論的な整理が求められている。 研究の2つ目の柱のカリキュラムの評価方法の開発は、コンセプトマップに着眼して進めることができた。このコンセプトマップの開発については、明らかにしてきたその活用法とカリキュラム評価方法としての特質を実証的に検証することと、課題として明らかになってきた①自己評価ツールとしての精度を高めることと、②コンセプトマップによる評価と事例シナリオの評価の関連性を明確にすることが、今後の課題である。 令和3年度は、研究の完成年度として、上記の研究の2つの柱のそれぞれの残された課題に取り組み、当初の研究計画で示しているように、開発した対話的事例シナリオを用いたPBL教育を核とした教員養成授業科目のベストミックス(専門的知識・技能の形成、現場体験と理論の往還等を含めた最適カリキュラム)とコンセプトマップを中心とした評価方法を冊子としてまとめ、各学会等でシンポジウムを開催し公表し、第三者による検証作業を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が787,337円になっている。その最も大きな要因は令和2年度の旅費支出額が0になったことにある。それはコロナウィルス感染症拡大によって、予定していた研究調査と学会等での研究成果発表及び研究打合せを、すべてオンラインで行ったことによる。また「その他」の支出で、研究授業を対面で参観できずに記録を取れなかったために、予定していたテープ起こし料が発生しなかったことも要因になっている。 令和3年度は、上記次年度使用額と予定の助成金80万円を合わせて158万円あまりの使用を計画している。計画当初予定していたのは、物品費=8万円、旅費=43万円、人件費・謝金=10万円、その他(印刷費等)=19万円、計80万円である。それに加えて、前年度に実施ができなかった対面でのPBL教育調査研究旅費追加分(東京都市大学・4名)=15万円と、授業記録テープ起こし料=20万円を計上している。さらに研究の最終年度として、研究成果の追加発表のための旅費(日本教育方法学会・宮城教育大学・2名分)=11万円、研究成果をまとめる合宿研究会旅費(10名分)=22万円、印刷代増額分=10万円、消耗品=7,337円、合計787,337円の支出を予定している。
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