研究課題/領域番号 |
19K02820
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
渡辺 哲男 立教大学, 文学部, 准教授 (40440086)
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研究分担者 |
山名 淳 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (80240050)
勢力 尚雅 日本大学, 理工学部, 教授 (80459859)
柴山 英樹 日本大学, 理工学部, 准教授 (60439007)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | プログラミング的思考 / 霊性 / もう一つの「論理」 / メディアアート |
研究実績の概要 |
2019年度の成果は、「プログラミング的思考」と「アート的思考」をどのように統合的に捉えるかを検討するための重要な要素となる「霊性」概念への着眼であった。2019年4月に科研メンバーの編著による『言葉とアートをつなぐ教育思想』(晃洋書房)を刊行した。この刊行をきっかけに、教育哲学、美術教育が専門の小松佳代子氏から講演の依頼を受け、同年8月、渡辺が小松氏の科研の研究会で本研究の実質的なスタートとなる発表を行った。「霊性」をキーワードに、「プログラミング的思考」のみの育成に傾注することによって見落とされてしまうもう一つの「論理」とでも呼べるものへの着眼の必要性を、鈴木大拙、志村ふくみなどをケースとして論じた(その後、加筆修正して『立教大学教育学科研究年報』第63号、2020年2月)に掲載した)。この報告において、効率性と合理性を追求する「プログラミング的思考」に対する評価は、「近代化」に対する私たちの態度がいかにあるべきかを考察することと切り離せない問題であることを指摘した。 科研メンバー全員による学会報告は今年度企画しなかったが、数回の研究会を行った。このなかで、プログラミング教育の現状、シーモア・パパートやシェリー・タークル、ミッシェル・レズニックの研究の紹介、プログラミングとアートを結ぶメディアアートに携わる人びとの紹介などが行われた。また、2019年12月の研究会には、動物の比較認知科学を専門とする研究者をお招きし、チンパンジーやボノボなどの研究から「人間らしい」コミュニケーションとは何か、という問題についてご報告いただき、大きな刺激を受けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記したように、「プログラミング的思考」と「アート的思考」を統合的に捉える、あるいはいずれか一方にだけ傾斜させるのではなく、いずれも必要な思考法として双方を連関させるためのキーワードとして「霊性」に着眼できた。これは、今年度の大きな成果として挙げられるものであり、本研究が順調に進展していることの裏づけとなる。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の研究代表者の成果を研究分担者に共有し、研究グループとしての学会発表企画、書籍刊行の企画などを、今後進めていきたい。とくに、倫理学領域においても「教育」への関心は高まっており、日本倫理学会においてワークショップなどが企画されるなどしている。教育学界以外の学界に向けても、私たちの研究成果の報告が行えればと考えている。また、プログラミング教育そのものの課題についても、教育メディア学会などの学会で、発表できるようにしたいと考えている。 さらに、本研究課題を進めるうえで、科研メンバー共通に重要だと認識した具体的なケースとして「演劇」が挙げられている。この問題は、教育哲学会などで研究メンバー全員による発表の機会を得られればと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた、研究会に外部研究者を招いての講演計画を延期することになったため、当該の謝金、交通費として予定していたものが残額となった。令和2年度は、今後招聘が可能になれば、この講師講演の謝金および交通費、図書費、新型コロナウイルス対策のため、オンラインで行う研究会のためのPC関連機材の購入費用、秋以降の学会出張費用などに使用する計画である。
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備考 |
(研究会における研究代表者の報告) 渡辺哲男「「『言葉とアートをつなぐ教育思想』に「霊性」をつないでみる:鈴木大拙から志村ふくみへ」判断力科研第4回研究会 2019年8月31日(判断力養成としての美術教育の歴史的・哲学的・実践的研究(研究代表:小松佳代子)からの依頼による。於武蔵野大学)。
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