研究課題/領域番号 |
19K02822
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研究機関 | 京都ノートルダム女子大学 |
研究代表者 |
渡辺 春美 京都ノートルダム女子大学, 現代人間学部, 教授 (10320516)
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研究分担者 |
冨安 慎吾 島根大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (40534300)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 漢文教育 / 実践史 / 文献目録 / 漢詩教材 / 史伝教材 / 授業構想 |
研究実績の概要 |
2020年度の本研究の課題は、次の2点が中心であった。①実践史研究の成果と課題を踏まえ、「関係概念」に基づくカリキュラムを作成し、授業を構想する。②カリキュラム・授業構想のための基本となる、ア.目標、イ.漢文教育内容(教材・言語能力)、ウ.方法、エ.評価の各論を授業作りの基礎論としてまとめる。しかし、研究の基礎となる実践史関係文献の収集に遅れが生じ、なお実践史の考察が中心になっている。 2020年度は、予定していた学会の多くが中止となった。学会発表は、「戦後漢文教育実践史の展開-史伝教材を中心に-」(第72回 中国四国教育学会 2020.11.21 広島大学 オンライン学会)の1回に終わった。 論考・記録については、①「戦後漢文教育実践史の展開―『新しい漢字漢文教育』誌を中心に―」(『語文と教育』34号 鳴門教育大学国語教育学会 2020.09.30)②「戦後漢文教育実践史の展開―史伝教材を中心に―」(『九州国語教育学会紀要』第10号 九州国語教育学会 2021.03.30)、ならびに、鼎談に基づき、③「戦後の実践史から見た漢文教育の現状と展望」(『新しい漢字・漢文教育』第70号 全国漢文教育学会 2020.06.30)の執筆を行った。①においては、考察の観点として、a.漢文観、b.興味・関心・問題意識の喚起、c.学習材の開発・編成、d.主体的学習の保証、e.付けるべき読む力の設定、f.協働的学習、g.創造的読みと批評、h.学習者による批評をとおした内化、を設定し、実践者の問題意識をとらえるとともに、漢詩の実践史の展開をまとめた。②は、同じ考察の観点に基づき、史伝教材の実践史についてまとめたものである。③は、戦後の学習指導要領の変遷に、各期の代表的な漢文教育実践を合わせて、漢文教育の展開を概観した。 他に、研究分担者:冨安慎吾が漢文教育関係論文のデータベースの作成を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度の研究の進捗状況は、①実践論考の収集、②作品・分野別漢文教育実践史の考察、③実践史の成果と課題に基づく授業構想に遅れが出ている。 その理由は、以下の通りである。 (1)大学図書館における文献収集が、コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言等によって出来なかったことがある。一部については複写申請を行って研究を進めたが、実践論考は、目で見て確かめて複写するために、所蔵大学に行くことが必要になってくる。また、一部の『漢文教室』(大修館)、『斯文』(斯文学会)などは所蔵している図書館が限定される。所蔵図書館に行くことが出来なかったことが遅れにつながった。(2)(1)の遅れによって、作品・分野別の漢文教育実践史の考察を進めることが難しくなった。(3)学会の開催中止が相次ぎ、予定していた学会発表ができず、発表に合わせて研究を進め、まとめることが出来なかった。発表とは別に研究を進めることもできたであろうが、発表がなくなることによって、眼前のオンライン授業作り、学生から毎時提出されるレポート類の処理に時間を割くことになり、本研究へのエフォート率を維持することが出来なくなったことも理由に挙げられる。(4)中・高等学校の教員である研究協力者と授業構想に関する打ち合わせをすることも難しくなった。協力者が感染対策に追われ、眼前の本務を行うことに追われたことも理由の一つである。 コロナウイルスの感染拡大により、予想外の業務が発生し、研究環境が変わり、研究活動が滞ったことが上記の根底にある理由である。
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今後の研究の推進方策 |
最終の3年目を迎えた2021年度も、コロナウイルスの感染拡大状況が続いている。 コロナウイルスの感染拡大により、①調査・学会発表等のための出張制限、②予定外の業務(リモート授業)―講義資料の電子化、レポート類の処理、オンライン・リモート技術の習得による多忙化等により、本研究のためのエフォート率の低下等が生じている。現状を見れば、コロナ禍出現以前の状態に戻ることは、難しいと思われる。 そのために、大きくは次の2点の方策を考えている。 (1)研究の縮小が1つである。作品・分野別漢文教育実践史の研究によって成果と課題を把握し、授業構想・実践に基づく漢文教育の改善を予定していた。しかし、感染拡大の現状況を考えると、研究協力者の学校を訪れて、研究授業を行い、協議することが難しくなっている。ついては、授業の構想・実践に基づく授業改善の提案を割愛し、他日に期すという方策である。(2)その上で、現在収集している実践論考を基に、それを後日補充し、補正することを視野に入れて、実践史の執筆を進め、成果と課題を明らかにすることである。 (3)もう一つは、研究期間の延長である。作品・分野別漢文教育実践史の研究を、精度の高いものにし、学校教育における漢文教育の授業に資するためには、十分に文献を収集し、丁寧な考察を行う必要がある。昨年度と今年度のコロナウイルス感染の現状を考えると、研究を1年延長し、研究を実りあるものとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、以下の通りである。(1)①コロナウイルスの感染拡大により、調査のための出張(東京:二松学舎大学図書館)が無くなったこと、②発表、参加を予定していた以下の学会、日本国語教育学会主催全国大会(中止)、全国大学国語教育学会(春秋ともオンライン)、広島大学国語教育学会(中止)、九州国語教育学会(中止)、中国四国教育学会(オンライン)、漢文教育学会(中止)が、中止、あるいはオンライン開催となり出張費が不要になったこと、③中・高等学校の研究協力者との打ち合わせが、コロナウイルス感染対策等によって多忙化し、中止になったことによって出張費、謝金等の支払がなくなった。また、(2)コロナウイルス感染拡大によるリモート授業等の準備、提出された課題の処理等による多忙化で、科研費研究課題に割くエフォート率を大きく下げざるを得なくなった。そのために予定していた物品(書籍等)の購入が遅れたこともある。 今年度も、コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言が発出され、出張等における使用が縮減される。縮減した研究費は、研究成果を公開するための冊子の編集を充実、拡大することに費やしたい。また、漢文教育関係論文データベースの公開、さらに、実践史記述のための調査を充実させるためにも費やしたい。加えて、本研究の精度を上げて充実させるために、研究期間の延長を視野に入れ、研究費の使用を考えている。
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