研究課題/領域番号 |
19K02822
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
渡辺 春美 高知大学, その他部局等(名誉教授), 名誉教授 (10320516)
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研究分担者 |
冨安 慎吾 島根大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (40534300)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 漢文教育 / 実践史 / 文献目録 / 漢詩 / 日本漢詩・漢文 / 論語 / 故事成語 |
研究実績の概要 |
2022年度の研究実績の概要を、1.関係資料の収集、2.漢文教育実践史の研究、3.漢文教育実践報告の3点から以下に述べる。 1.関係資料として、漢文教育課程史関係資料、漢詩・日本漢詩教育・漢詩創作実践資料、戦後初期の経験主義に基づく漢文教科書・指導書を収集した。また、分担者(冨安慎吾・島根大学)は、引き続き、「漢文教育関係論文データベース」の補充を進めた。 2.漢文教育実践史の研究として、3本の論考を発表した。①「戦後漢文教育実践史の展開―長谷川滋成による言語教育と文学教育の総合化―」(『語文と教育』36号 鳴門教育大学国語教育学会)において、長谷川滋成は、「言語教育」の追求がそのまま「文学教育」につながるとし、両者の総合化・融合化を求める漢文教育実践を行ったことを明らかにした。②「戦後漢文教育実践史の展開―日本漢文・漢詩教材の場合―」(『国語教育学研究誌』33号 大阪教育大学国語教育研究室)では、日本漢文・漢詩が軽視された時期、それが生活に根ざした地域的風土的要素の表現として評価されるに至った時期、日本と中国の文化理解に価値が見出された時期、教材の開拓と新たな価値の創造を試みた時期、郷土の漢文教材化とその実践を試みた時期に分けて考察した。③「戦後漢文教育実践史の研究―平成年代の漢詩教育を中心に―」(『九州国語教育学会紀要』第12号 九州国語教育学会)では、平成年代に入っても、漢詩教材の固定化が見られたが、徐々に、郷土の漢詩の教材化が増加し、主体的な学習を求めて批評理論を取り入れた実践が試行されるに至ったことを跡づけた。 3.漢文教育実践史の報告として、研究協力者として石村由里((千葉県南房総市立富浦中学校)による、「楽しく学ぶ『故事成語』」・「生きた学びとしての『論語』の学習」の2本が、漢文教育の活性化に資する優れた実践としてまとめられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
第1の理由としては、コロナウイルス感染拡大がある。2022年度においても、コロナウイルスの感染が、第7波 7月1日~9月30日、第8波 11月30日~1月24日と拡大し、それにともなって「新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置」が施行された。これによって国公立・私立大学図書館等が外来者の利用制限を行い、調査活動が大きく制限された。調査活動の制限が、研究の進行の遅れとなった。 このコロナウイルス感染拡大が、中・高等学校のカリキュラムにも影響を及ぼし、予定されていた高等学校における漢文教育実践が行えなくなった。これによって実践報告をまとめることができなくなったことがある。 第2の理由には、研究対象資料の偏りと乏しさがある。そのために、特に作品・分野別に実践史を考察することが難しくなっている。特に1945~1970年までは乏しい状況にある。それを補うために諸雑誌を広く調査したり、教科書・指導書の類を調査したりする必要が生じ、時間がかかることになった。 これらの理由によって、本研究もやや遅れ、一部については、改めて研究計画を練り直し、縮小せざるをえないことになった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の推進方策は、以下の通りである。 ①研究計画の範囲を絞るとともに、漢文教育実践史の背景、基盤ともなる教育課程史、思潮史、漢文教育個体史についても視野に入れ、研究の質を高め、充実させる。昨年度の本欄には、「本研究を戦後における作品・分野別漢文教育実践史研究に絞り、その質を高め、充実を図ることにしたい。実践史研究に基づく授業構想と実践は、縮小して行うことにする。」と述べたが、学校教育が通常化されつつあることを考慮し、可能な限り、授業構想と授業実践の報告についても、取り入れることにする。 ②漢文教育文献目録の作成については、作品・分野別漢文教育実践史とは別に、新たな調査活動は縮小し、これまでの調査活動による収集、補充を反映させ、「漢文教育関係論文データベース」として整備・充実させて公開することに重点をおくことにする。 本研究は、コロナ禍によって遅れることになったが、できるかぎり研究の質を高め、年度末には、報告集を刊行することにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、以下の通りである。 ①コロナ感染拡大第7波・8波によって、研究協力者との協議がとどこおり、また、中等学校における漢文教育実践のための授業計画の変更等があり、そのための経費支出がなくなったこと、さらに、予定していた研究協力者への謝金の支出もなくなったということによる。②研究計画の変更、縮小のほか、漢文教育実践関係資料の収集が資料の乏しさもあって、研究に遅れが生じ、史的考察も滞ったために、報告書の編集が進まず、刊行することができなかったということがある。 次年度使用計画として、①まず、資料の補充のために年度前半に調査を行うための出張経費として用いる。②また、漢文教育実践計画を縮小し、実践構想・実践論稿を協力者に求め、その謝金として使用する。③ついで、学会発表を行うための経費として用いる。④最後に、報告集の刊行経費として使用する。
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備考 |
(1)の「漢文教育関係論文データベース」は、科学研究費補助金19K02822 基盤研究(C)「作品・分野別漢文教育実践史に基づく漢文教育改善の研究」(研究代表者:渡邊春美)により作成された漢文教育関係論文データベースである。現在、1965年以降の論文について、部分的にデータを公開している。
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