研究課題/領域番号 |
19K02824
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研究機関 | 南九州大学 |
研究代表者 |
藤本 朋美 南九州大学, 人間発達学部, 講師(移行) (50782190)
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研究分担者 |
佐藤 栄作 愛媛大学, 教育学部, 教授 (80211275)
鈴木 慶子 長崎大学, 教育学部, 教授 (40264189)
萱 のり子 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (70314440)
中村 佳文 宮崎大学, 教育学部, 教授 (50717915)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 平仮名 / 仮名の由来・特質 / 言語文化 / 教材 / 対話 |
研究実績の概要 |
本研究は、「平仮名」を日本文化事象の一連のつながりの中で認識することのできる教材を開発し、授業実践モデルを示すことを目的としている。 グローバル化が一層進展する中、これからを生きる子どもたちには、自己の文化と個人的な経験の真価を正しく受けとめ、同時に、異なった文化を持つ人々の価値観や伝統の真価をも正しく受けとめる力が求められている。このような力を育成するため、本研究では、学びへの内的動機を高め、学ぶことの「おもしろさ」を起点に他者と対話できる教材の開発を目指している。具体的には、漢字から仮名の誕生までの経緯及び真仮名から平仮名への変遷や普及といった時間的変遷を観察することができ、さらに各地点から学術的エビデンスや関連の文化事象をたどることができる教材の開発を目指す。 2019年度(1年目)は、主に「教材設計」および「教材の方向性と具体」について研究を行った。 1)教材設計:自己学習と協調学習とを可能にするため、学習科学の立場から、教材の設計を検討した。具体的には、すでに開発されている教材(オンラインによるもの、仮名を教材にしたもの)について、その目的や設計を分析することで、深い学習を可能にするモデルの構築を目指した。 2)教材の方向性と具体:研究分担者及び研究協力者との研究協議を経て、教材の具体について、次の3点を確認した。(a)教材利用対象者を広げ、児童・生徒に加え、教材を提供する側の教師や教員養成段階の大学生も含むこと。(b)平仮名成立について時間的変遷を観察できる資料を収集すること。(c)平仮名成立過程における未詳・未知の領域や事項も教材コンテンツに含むこと。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、2019年度は(1)小学校高学年を対象とした「仮名の由来や特質」の授業の実際を調査し、問題点を明らかにすること、(2)開発する教材のコンテンツ選定を行うことを予定していた。これは、平仮名48文字全てにおいて、字源とされる〔万葉仮名の実際〕から〔現代の平仮名(及び書字軌跡)〕に至る変遷過程を動的に示し、学習者である児童・生徒がその時間的変遷を時系列的にも遡及的にも可視化できる教材を開発することを目指していたからである。 しかし、万葉仮名から平仮名への変遷は必ずしも一つの平仮名に対し一つの字母という1対1の連続だけでは説明できないことを受け、字母の多様性や変遷過程の実際を示すことに重点をおくよう教材コンテンツのあり方を変更した。そのため、2019年度は「教材設計」および「教材の方向性と具体」について研究を進めることとした。 「教材設計」において、既存の教材(オンラインによるもの、仮名を教材にしたもの)の目的や設計を分析し、協調学習を可能にするモデルの構築を目指したが、十分なデータを得ることができず、現在も資料収集と分析を続けている。 以上から、進捗状況を「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度(2年目)の計画は、次の5点である。 (1)既存教材等の分析から、協調学習を可能にするモデルを構築する。(2)平仮名の成立過程の実際を示す文化財や資料を選定し、教材コンテンツとしての構成を検討する。(3)選定した文化財や資料の収集及び使用について、提供先と調整(デジタルコンテンツ等の提供依頼、使用条件の確認など)を行う。(4)教材(Webコンテンツ)を試作する。(5)試作した教材について、教師や大学生から評価を受け、改善点を明らかにする。 本研究課題において、学習者の学びをより深いものとするためには、その契機として、平仮名の成立過程を実際に見ることができる文化財や資料の存在を知らせることが重要であると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費を当初予算よりも低く抑えることができたため、次年度使用額が生じた。 次年度は、余剰分は研究協議のための旅費として使用を計画している。
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