研究課題/領域番号 |
19K02828
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
森 健一郎 北海道教育大学, 大学院教育学研究科, 教授 (70710755)
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研究分担者 |
栢野 彰秀 島根大学, 学術研究院教育学系, 教授 (50466471)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 科学的な概念 / 学習方略 / STEM教育 / STEAM教育 / 見方・考え方 / 学習指導要領 |
研究実績の概要 |
現在、「何を教えるか」から「どのように考えるか」という学力観の変化がもたらされており、この変化は2018年度から順次実施されている新学習指導要領にも、各教科・領域の目標を達成のために求められる「見方・考え方」というかたちで反映されている。この「見方・考え方」については、今後、実践例を通して、資質・能力の評価の在り方も含めて,教育目標・内容・方法等の一体的検討を進めること、そして、そのための実践的な学術的知見を整理することが求められている。申請者らは、これまでに、諸外国で推進されている教育プログラムの一部を「見方・考え方」として活用した問題解決学習を開発し、実践し、評価をおこなってきた。 その結果、「スケール・比・量」、「システムとシステムモデル」、「安定性と変化」、「構造と機能」といった概念が「見方・考え方」として有効であることが示唆されている。 本研究では、申請者らの先行研究を基盤とし、これらの「見方・考え方」を学習のための方略として授業で意識的に活用するためのカリキュラム作成をおこなうとともに、その評価の視点を明らかすることを目的とした。 2019年度は、この目標を達成するための下位目標として、①「科学教育の目標と科学的な概念との関係を整理」することと、②「学習方略の活用を促すための評価の観点を検討」することを目指した。①については文献研究を進め、科学教育およびSTEM・STEAM教育の文献(海外)や科学教育の文献(国内)を調査し、論文を作成した(投稿中:2020年4月20日時点)。②については、小学校・中学校の学習内容を連続的に扱うカリキュラムを開発し、現在実践中である。 これにより、各学校における学習・指導方法および評価方法の支援,さらに、資質・能力育成に関わる部分での教員養成・研修に資することができると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、この目標を達成するための下位目標として、①「科学教育の目標と科学的な概念との関係を整理」することと、②「学習方略の活用を促すための評価の観点を検討」することを目指した。 ①については文献研究を進め、科学教育およびSTEM・STEAM教育の文献(海外)や科学教育の文献(国内)を調査し、論文を作成した(投稿中:2020年4月20日時点)。 論文では、「スケール・比・量」、「システムとシステムモデル」、「安定性と変化」、「構造と機能」といった概念のうち、特に「見方・考え方」、そしてこれの構成要素である「動的平衡」に着目して授業実践のプランを考案した。この概念に注目した理由として、「この概念を適用することで、小学校理科において結果の記憶に頼らざるを得なかった内容(水蒸気や溶液に関する現象)について、理由を踏まえて説明することが可能になること」、「一見まったく異なる現象に見えるが『動的平衡』という共通の概念によって同様の現象としてとらえることが可能になること」がある。これは、小学校理科の学習内容を定着させることに効果があるだけではなく、中学校で学習する水蒸気量や飽和溶液の理解についても効果的であると考えられるため、特に重点として扱っている。 ②については、上記①を踏まえ、小学校・中学校の学習内容を連続的に扱うカリキュラムをガイダンス授業として開発し、現在(2020年4月21日時点)実践中である。コロナウィルスの影響で2020年2月より断続的に休校になっている地域が多いため、若干授業の進行が遅れる可能性があるかもしれないが、遅れることも想定して計画を立てているため、全体的な進捗は計画通りである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、「科学的概念を科学方略として継続的に活用するためのカリキュラムとその評価のあり方」を明らかにすることを目的としている。 そのための手段として、次の3点に取り組む計画である。 ①「科学教育の目標」と「授業の目標」との関係を整理すること。 ② 学習方略の活用を促すための評価の観点を検討すること。 ③ 小中学校で継続的に学習方略を活用するための課題を開発すること。 ①については、「新学習指導要領もとづいた小中学校理科の目標」と「科学教育の目標」について文献研究によって整理をおこなってきた。現時点(2020年4月20日)で、文献調査の結果が整理できたことから、カリキュラム構成に対する提言と、実際の授業での適用例を論文としてまとめた論文を投稿中である。2020年度は、この成果をもとに②に取り組む予定であり、2020年4月に中学校における授業実践を開始している。これは、中学校入学段階で、小学校理科の復習や定着を意図したガイダンス授業を実践するというものである。この授業の評価については、ペーパーテストの内容によって評価をする計画を立て進行中である。このペーパーテストは選択式の問題と記述式の問題を併用したものであり、質的な分析と量的な分析の双方が可能になるように計画している。そして、この実践の結果を受けて③に取り組む計画である。授業研究の中で、新たに「動的平衡」を適用することができる現象がいくつかあったため、それを具体的な教材として活用できるか検討中である。そして、「スケール・比・量」、「システムとシステムモデル」、「構造と機能」といった、現時点では重点的に取り上げていない概念についても、いくつかの単元で活用可能なヒントを得ることができたので、今後、小学校や中学校で活用できるような展開の方法を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
分担者の研究進捗状況は予定通りであるが、支出額が当初の想定よりも少なくなったことで残額が生じた。
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