2022年度の主な成果として、次の2点があげられる。 第1は、2021年度の研究発表(社会系教科教育学会第33回研究発表大会)を踏まえ、山梨県内の小学校教諭3名の協力を得て、初等歴史教育において、社会の中の広義の歴史に関するメタヒストリー学習はどうありうるかについて、第3学年から第6学年までの社会科の歴史的内容項目における段階的な重点課題の設定を通して明らかにしたことである。その成果を「小学校社会科におけるメタ・ヒストリー学習の重点課題-中高学年を通しての段階的展開-」(共著論文)にまとめた。 第2は、中等歴史教育において、社会の中の広義の歴史に関するメタヒストリー学習はどうありうるかについて、ドイツ諸州の歴史科教科書や歴史科学習指導要領などをもとに、各単元レベルとカリキュラム全体レベルとにおけるメタヒストリー学習の取り扱いを分析検討し、中等歴史教育における段階的展開の複数の可能性を明らかにしたことである。その成果を「ドイツ中等歴史教育における現在との関連化-歴史文化学習の場合-」(単著論文)にまとめた。 本研究(2019~2022年度)では、過去について取り組むヒストリー学習と過去を扱った既存の歴史について取り組むメタヒストリー学習との有機的関連、及び、小学校から高等学校までの段階的展開について究明した。2019・2020年度は有機的関連の究明を中心に、また、2021・2022年度は段階的展開の究明を中心に取り組んだ。社会認識教育やそれを一環とする社会形成教育としての歴史教育の新たな可能性を単元レベルとカリキュラム全体レベルの両レベルにおいて究明できたことが本研究の意義である。
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