本年度は下記2点について研究が進展した。①ESDの視点を取り入れた道徳科教材としてデザインしたワークシートの活用方法について、韓国と共有することを視野にいれて検討を進めた。②ESDの視点を取り入れた道徳科を発展させる応用的なプログラムについてさらに検討を進め、理論的背景の整理とともに実践研究を進めた。 ①については、韓国におけるESDの位置づけや道徳科の新しい方向性について整理を行った。韓国におけるESDはGCED(世界市民教育)の包括的な概念の下に位置づけられてきた。しかし、OECDやユネスコ等の国際的な流れとともに、韓国では新しい社会を想定した2022年度改訂教育課程が公表された。「包容性・創意性・主導性」をキーワードとしており、ESDの視点についてもより濃厚に描かれるようになった。これまで開発してきたプログラムやワークシートを韓国の道徳科の「自然との関係」の視点をベースにして共有していくことは可能な段階にある。 ②については、前年度までに整理した多様な文化背景をもつ人々との共生から、生きやすい、暮らしやすい社会を考えるプログラムからさらに発展させて、ESDの視点を取り入れた道徳科で重視してきた、「(D) 主として生命や、自然、崇高なものとの関わりに関すること」を取り入れ、自然環境から人間との共生まで地続きで学ぶことについて考察を深め、研究発表や論文作成を行った。また、それに関連する教員の取り組みや身振りについても聞き取り調査を行い、その結果について論文にまとめた。 研究期間全体を通じで実施した研究の成果としては、①ESDの視点を取り入れた道徳科を中心とした応用的なプログラム開発、②ESDの視点を取り入れた道徳科で使用可能なワークシート開発、③韓国におけるESDや道徳科との関連についての基本的な整理を行い、日本とプログラムを共有する方向性について検討できたことである。
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