本研究では、(1)「和歌を詠むこと」を「自分の心の揺れにふさわしい言葉を探し求め、それを形にする言語活動のこと」と捉えた。また、(2)「和歌の読解授業の目的」を、「和歌で使われている言葉の選択や組み立てを吟味することで、詠歌主体が自らの心の揺れをどのようなものとして描き出しているのか理解すること」とした。その上で、小学校・中学校・高等学校の各発達段階に応じた授業を構想する予定であったが、結果として中学校での授業実践しか行えなかった。 中学校の実践では、“和歌の表現を通じて、詠歌主体がどのような心の揺れ(感覚・イメージ)を伝えようとしているのか”を考えるため、Yチャートを利用した。そこでは、和歌を捉えるための視点を3つ設定し、その視点をもとに気付きを書き出していくことで、それぞれの歌のイメージを膨らませる。そしてそれらを共有することによって、歌の表現を通じて具現化されている詠歌主体の心の揺れをつかまえることを目指した。 実践の結果、生徒たちは①和歌を読解する際の視点設定(「色」「情景」など)の重要性や、②徹底した言葉への着目(語義を調べて解釈に活かす、自分の気づきがどの表現から生まれたのか意識する)の重要性と共に、そうした①②のような方略によって、和歌を生み出した詠歌主体の心の揺れを豊かに解釈できるということを学んだことが窺えた。
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