主に平成から令和にかけての読書指導について研究に当たった。1点目として、読書指導における司書教諭と学校司書の役割が大きいことが明らかになった。勤務する大正大学では附属図書館長を勤めており、中学生・高校生に利用の開放をしている。5月27日に本学附属図書館と公益財団法人文字・活字文化推進機構、及び公益社団法人全国学校図書館協議会とともにシンポジウム「学校司書の社会的地位の向上を目指して」を開催した。登壇者として討議し、中高生の読書指導や学校司書の役割の重要性を明らかにすることができた。2点目として、高校における読書指導の在り方としては、探究学習と連携した読書指導が効果的であることが明らかになった。とりわけ2018(平成30)年、高校では新しい学習指導要領が告示され、多くの高校では「主体的・対話的で深い学び」としての探究学習が行われるようになった。複数の都立高校や中高一貫校、文部科学省からスーパーサイエンスハイスクールに指定されている高校(鹿児島県立錦江湾高校)などの視察を行った。学校図書館と連携した調査・研究のための読書指導の重要性が明らかになった。3点目として、読書推進には、学校だけではなく、地域の公共図書館、大学附属図書館等の研究機関を含めた読書環境が重要であり、読書を中心に据えた社会的なグランド・デザインを構築することが重要であることが明らかになった。全国の公共図書館(山形県東根市図書館、宮城県多賀城市図書館、秋田県由利本荘市立中央図書館など)や自治体が経営する書店(青森県八戸市)の調査に当たった。また、海外では北欧のヘルシンキ市の高校と公共図書館、ストックホルム市の公共図書館を視察した。経済格差が進む現代社会の中にあって、これからは社会的な包摂、多様性を認め合う社会の実現を目指して、電子書籍を含む本への「アクセスビリティ」を確保することが重要であることが明らかになった。
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