本研究では,ソーシャルメディアが存在する社会構造を3観点(発信者・受信者・メディア)から明らかにすると共に,具体的なソーシャルメディアを事例にした教育内容を策定し,ソーシャルメディア社会を対象にした構築型の学習指導論理について提案し,開発した授業を実証的に検討することで,ソーシャルメディア社会におけるメディアリテラシーを明らかにすることを目的とした。 結果として,AI等のICT技術の発達によりメディア環境は拡張し,コミュニケーションの主要な要素であるコードとコンテクストが受信者,発信者に認知的影響を与えるといったソーシャルメディア社会の構造を明らかにすることができた。また,そのことに基づく授業論理として,米国学術検討会議(2000)によって示された学習に関する基本的事実などに着目し,学習者の既有知識に基づく「ソーシャルメディア社会の問題構造の批判的認識」を目指す部分と新たな概念形成を目指す「より良いソーシャルメディア社会への対案の構築」部分から成る構築型の学習モデルを明確にすることができた。更に,学習モデルに基づき,ソーシャルメディアの特徴から選定したX(Twitter),YouTube,Telegramを事例にした授業を複数開発し,学校現場において授業実践し,実践結果を学習者のソーシャルメディアに関する事実認識と価値認識の成長の点から検証することで,社会科におけるメディアリテラシー育成の可能性とその必要性について検討することができた。
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