本研究ではこれまで、性の多様性をめぐる課題にことばの問題があることを確認し、小学校における性の多様性の包摂を国語科教育として取り組むこと、また、性の多様性の包摂をめざすことが、性的にマイノリティとされる児童生徒を含む、すべての学習者への言語力育成につながることを明らかにしてきた。 最終年度である2021年度では、これまで検討してきた、性の多様性を包摂する小学校国語科教育カリキュラムについて、さまざまな研究会や研修での講師を通して提示し、参加者からの意見をふまえてカリキュラムを再検討、修正することができた。特に、国語科教育における言語感覚の育成や語彙指導、批判的リテラシーに関する単元や、文学的文章を「読むこと」の授業提案については、実際の教科書教材のとらえかたを提案したり、教材開発や単元構想を具体化したりすることができた。 また、人権教育や性教育の知見を得ながら、性の多様性をめぐる見方・考え方の深化拡充は、人権教育や性教育で向上される資質のみならず、国語学力としても措定しうることも明示した。
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