研究課題/領域番号 |
19K02853
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研究機関 | びわこ学院大学 |
研究代表者 |
南 雅則 (南雅則) びわこ学院大学, 教育福祉学部, 教授 (00827462)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 中学生 / 学校適応感 / リアリティショック |
研究実績の概要 |
本研究の第1の目的は,中学生の学校適応感を外的適応感と内的適応感の2軸の関係から捉え,教師が生徒の状態を簡便な方法で把握することができるよう新たな学校適応感尺度を開発することであった。初年度は,尺度の開発のための調査項目の収集および予備調査を実施し外的適応感と内的適応感の下位因子間には一部を除いてほほすべてに有意な相関が見られることが確認された。 2年目に当たる今年度は中学校新入生が入学後の学校生活の中で感じるリアリティショックを測定する尺度の開発を行った。南ほか(2011)の中学校生活予期不安尺度を参考に文言を修正し 16項目で構成される質問紙を整えた。中学生145名(男子78名,女子67名)を対象にリアリティショック質問項目について探索的因子分析を行った結果,2因子12項目が抽出され,その後のGP分析ならびに確認的因子分析の結果,「拘束性(9項目)」と「非親和性(3項目)」から成る「リアリティショック体験尺度」が開発された。さらに,外的適応感及び予期不安とリアリティショックの影響を検討するため階層的重回帰分析を行った結果,「教師との関係」と「家族との関係」において予期不安とリアリティショックの交互作用項投入の効果が確認された。入学前に感じていた中学校生活に対する不安が高くても,入学後のリアリティショック体験が低ければ「教師との関係」は良好なものになること,また,入学前の予期不安が低くても,入学後のリアリティショック体験が高いと「家族との関係」得点は,予期不安が高い場合に比べて低くなることが示唆された。中学校での生活をある程度予測しているのかどうかの違いによって,リアリティショック体験の感じ方が異なることが明らかとなり,中学校入学後のリアリティショック体験は生徒自身が環境に働きかけて環境の再構造化を行うことが困難な領域において影響を及ぼしていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,昨年度終盤からCOVID-19による影響で計画が一部遅れていたが,今年度についてはほぼ予定通り進めることができた。リアリティショック測定尺度作成についての報告(学会発表:日本教育心理学会第62回総会)および学校適応感の尺度作成のための予備調査を終え,その結果を報告することができた(論文:びわこ学院大学研究紀要)。しかし,本調査を予定していた中学校がCOVID-19の関係により調査が行えなくなったため,本年度末にWeb調査に切り替え,調査会社にデータの収集を依頼した。調査は令和3年4月,6月,9月に行うことになっており,約80名のマッチングテータが確保できる予定である。以上のように令和3年度についてはこれまでの2年間の研究をふまえて当初の予定通り研究を進める目処が立っている。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度に予定している学校適応感の尺度作成のための本調査は,COVID-19の関係によりWeb調査に切り替えた。これにより,中学生約80名の令和3年4月,6月,9月のマッチングテータが確保できる見込みである。最終的には3時点のマッチングデータを分析することにより,学校適応感尺度の開発と予期不安とリアリティショックが学校適応感に与える影響についてのモデルの検証を行う予定である。学会発表については,2021年9月の日本学校心理学会と2022年3月の日本発達心理学会を考えている。発表内容は,予備調査で明らかになった予期不安とリアリティショックの交互作用と学校適応感の関係や新たな学校適応感の構造について報告したいと考えている。経費については,令和2年度では学術大会のほとんどがWeb開催やリモート開催となり,成果発表のための学会参加費用が執行されないまま令和3年度に繰り越されることとなったため,その分をWeb調査費用に充当したいと考えている。 また,3年目の予定にもあげている調査結果をもとにしたアセスメントシートの開発に取り掛かる予定である。当初,本調査実施に協力してもらった中学校へのフィードバックとあわせて中学校の教職員の意見を取り入れることを予定していたが,COVID-19の影響により中学校の教職員との連携が困難な状況である。そこで,可能な範囲で自由記述を収集し,その分析結果を反映させたいと考えている
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は以下の2点である。第1に,COVID-19の影響により当初発表を予定していた学術大会がWeb開催となり旅費が未使用に終わったためである。第2に,同様の理由により,質問紙調査の内諾を得ていた協力校の事情により調査の実施が困難となったため,データの収集をWeb調査に切り替えたことによる。今年度(令和2年度)の予算執行がほぼ昨年度(令和元年度)の繰り越し分と同額にとどまったため,今年度分を翌年度に繰り越すこととなった。翌年度分と合わせた経費の使途として,Web調査費用に充てる予定である。業者見積額は約490,00円であり,予算内での研究遂行に支障はない。
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