研究課題/領域番号 |
19K02854
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
小暮 克哉 岩手大学, その他, 准教授 (50782801)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 旧制高等学校入試 / 旧制高等学校長会 |
研究実績の概要 |
本研究の主な目的は、戦前期の旧制高校入試において、入試の実施主体である高校長がどのような教育的観点でその選抜を行ったか、受験者を送り出す中学校長がその入試に向けて度のような理念で教育指導を行ったかを分析し、学校間接続が潜在的に内包する「普遍的な問題」を考察するとともに現代の大学入試改革を考える際の着眼点を析出することである。 本年度は、①研究開始時に収集済みであった入試実施関係文書等(1,055点)の資料整理、②旧制高等学校長会議の決議書の収集、③朝日新聞、読売新聞、毎日新聞の各紙での高等学校長会議及び高等学校入試関係記事の収集及び電子化(文字起こし)。④旧制高等学校卒業生、旧制高等学校研究者等の関係者との意見交換を実施した。 それらの収集物及び意見交換を基に、当時も、現在の大学入試と同様に、高校毎に入試に対する考え方に大きな隔たりがあることが判明したため、高校長間の意見調整機能を果たしていた旧制高等学校長会議の顛末を特に上述の②、③を基礎資料として整理し、大正12年から大正15年までの4年分を試行的に分析した結果が、論文名「旧制高等学校長会議の研究」として、桜美林大学『大学アドミニストレーション研究』の第10号に掲載された。また、大学教育学会において「旧制高等学校長会議の研究」という題目で高等学校長会議の審議事項や新聞掲載事項、高校長へのインタビュー記事などから、当時の入試方針がどのように検討されていたのかを中心にポスター発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、予定していたタイムスケジュールどおりに概ね進行している。特に当時の新聞記事を入念に読み込むことで、当時の文部省、高校長、受験生、受験生父兄、一般社会等のステークホルダーが高校入試をどのように捉えていたかを時系列的に確認できるように、データの電子化(文字起こし)を実施したことで、旧制高等学校卒業生、旧制高等学校研究者等の関係者との意見交換の際の基礎資料を得たことは、本研究を多層的に捉える上で重要な事項であったと考えている。 また、旧制高等学校長会議の決議書については、当時の資料が散逸しているため、複数の資料館等で保存状況を調査したため、収集に時間を要した。しかしながら、多少の未確認の決議書はあるものの、大方の収集は完了している。今後は、収集した資料の電子化(文字起こし)を実施することになるが、そのための準備は順調に進んでいると判断している。 本研究の申請当初は研究初年度での研究成果の公表は想定していなかったが、資料収集が順調に進んだことを背景に、論文およびポスター発表にて公表することが出来た。論文査読者及びポスター発表での意見交換なども逐次取り入れながら、更に分析を多角的に進めることとしている。
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今後の研究の推進方策 |
今般のコロナウイルスによる外出自粛等の関係で、新規の資料調査や意見交換は制限されることが想定される。次年度については、初年度に収集した資料の整理(データ化)を継続するとともに、高校長会議の顛末を逐次まとめることを中心に分析を進める。但し、意見交換等が必要になった場合にはオンライン等で実施することを想定している。 そうした状況の下で、資料中心の分析になることが想定されるものの、それらの分析結果をもとに、旧制高等学校時代から指摘され続けてきた入試自体の問題や当時のステークホルダーの入試観を明らかにすることを試みる。 また、今回の研究期間が、2021年度からの大学新入試の実施と重複する点も踏まえ、今回の入試改革で起こった事象と、当時の旧制高等学校入試で起こった事象の相違等についても検討をすすめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、収集資料の文字起こし及び意見交換者への謝礼のため、人経費・謝金を計上していたが、資料収集の文字起こしは自分で行うこととしたため発生しなかった。また、謝金については意見交換者から辞退の意向があり支払いをしていない。また、書籍等の購入も想定していたが、資料収集のために各地の資料館等を訪問する際に書籍の必要個所を複写等で収集することが可能であったため、購入には至らなかった。 今後、文字起こしや意見交換の際の謝金、専門書の購入が必要になることが想定されるため、その際の支払い費用として次年度使用を予定している。
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