本研究の主な目的は、戦前期の旧制高校入試において、入試の実施主体である高校長がどのような教育的観点でその選抜を行ったか、受験者を送り出す中学校長がその入試に向けてどのような理念で教育指導を行ったかを分析し、学校間接続が潜在的に内包する「普遍的な問題」を考察するとともに現代の大学入試改革を考える際の着眼点を析出することである。 本年度は、前年度までの研究成果を基に、第15回旧制高等学校研究会において『昭和初期 旧制高校入試の挫折』というテーマで基調講演を実施した。また論文として、『旧制高等学校の教育政策決定過程に関する研究:校長と校長会に着目して』(査読あり)が桜美林大学研究紀要 総合人間科学研究 (3)に掲載された。科研費助成により前年度までに研究資料収集が行えたため円滑な研究を推進することができまた、それらの成果を基に上述の学術雑誌への掲載及び口頭発表、研究者間の意見交換等を行い、研究成果を広く社会へ発信した。 研究期間全体を通した研究成果の一部である、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞の各紙での高等学校長会議及び高等学校入試関係記事の電子化については、文章の校正等の作業も完了した。新聞記事については、本研究の主目的ではなかったが、昨年度実施した関係者インタビューの際にも、当時を思い出すために有効なツールとして機能したこと等から、後進の研究者のためにも、将来的に書籍化の可能性を引き続き探っている。
|