研究課題/領域番号 |
19K02855
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
大川 一毅 岩手大学, 評価室, 教授 (20267446)
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研究分担者 |
嶌田 敏行 茨城大学, 全学教育機構, 准教授 (00400599)
大野 賢一 鳥取大学, その他部局等, 教授 (90314608)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 大学教育後援会 / 大学評価 / 成果指標 / 相互理解 / 互恵的協働 / 学生の保護者 / ステークホルダー / 外部評価 |
研究実績の概要 |
本研究は3箇年3段階(3ステップ)による研究を計画している。研究期間中間年度である2020年度は、全「3ステップ」のうちの「ステップ2」と位置づけて、大学教育後援会の活動状況把握を目的とした全国アンケート調査の実施と集計分析、及びこれらをふまえた研究報告を行った。 【全国アンケート調査について】調査に関して具体的に言えば、①前年度に設計した全国調査を4月~5月に実施した。②この調査はウェブサイト等で組織の存在と所在先を確認できた全国530の大学教育後援会(保護者会)の会長(もしくは執行役員)に回答を依頼し、組織構成や事業内容、今後の展望と課題、役員等就任の背景、後援会への参加意識、等をたずねた。③回答は130組織からあった(回答率24.5%)。④これら回答の集計・分析を進め、その結果をとりまとめて大学教育後援会の設置と既存事業の現況を把握し、これを日本教育学会(8月)で報告した。また、大学紀要にも論文として報告した。 なお、全国調査を踏まえ、教育後援会の先導的事例収集にむけた訪問調査を予定していたが、COVID-19の全国的な感染蔓延状況から判断して中止せざるを得なかった。 【調査結果の報告とその内容】調査を踏まえた集計及び分析により、全国大学教育後援会の組織体制、事業内容、大学からの期待、今後の事業課題などを明らかにした。また、研究報告では教育後援会事業のいかなる側面がどのような水準であれば大学評価指標としての可能性を有するのかについて言及した。 【調査結果の還元】大学教育後援会の全国的設置現況とその事業活動を明らかにした研究論文や調査報告等がいまだ存在しないため、この調査結果自体が貴重であると自負している。こうしたことからも、調査結果は冊子としてまとめて回答協力組織に発送還元し、さらに大学リポジトリをはじめウェブサイトでも公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度の研究段階「ステップ2」では①全国調査の実施、②調査結果の分析、③成果指標の策定、④調査結果や考察の還元、⑤調査結果を踏まえた訪問調査、を事業計画としていた。 ①の全国調査については、ウェブサイト等で「全学的大学教育後援会」として所在先を確認できた全国530組織の会長(もしくは執行役員)に回答を依頼し、組織構成や事業内容、今後の展望と課題、役員等就任の背景、後援会への参加意識、等を調査した。②については、アンケート調査の集計後、「1 後援会事業の現況」、「2 後援会が重視する事業と役割」、「3 後援会会長・役員等の組織参加意識とその経験から得る大学理解」等の領域において分析を進め、また大学特性(設置、沿革、学部構成、規模、等)に照らした類型化整理を行った。これらにより大学教育後援会の設置と既存事業の現況把握、並びに事業者(会長、役員等)の参加意識を明らかにした。 ③アンケート調査の集計分析を踏まえた研究報告準備の過程において、教育後援会事業を大学評価に活用するための成果指標の策定も進め、④これらを踏まえた調査分析と考察の還元として、8月に学会報告(オンライン開催)、12月に論文発表を行った。また調査結果を冊子で取りまとめ、アンケート協力組織(教育後援会)に発送還元するとともに、大学リポジトリも含めてウェブサイトで公開している。 ⑤訪問調査についてはCOVID-19の全国的蔓延で断念せざるを得なかったが、これに代わるものとして、追加アンケートを企画し、2021年度当初に実施する。 これらのことから、2020年度におけるステップ②の進捗状況として、おおむね計画取りに事業が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究事業の最終年度である2021年度は、研究計画「ステップ3」として大学教育後援会が参加する外部評価の可能性について検討を進める。これにあたり、COVID-19の全国的蔓延により断念した「訪問調査」に代わるものとして、4月~5月時に「訪問調査に代わる追加アンケート」を実施し、その集計分析結果を可能な範囲で訪問調査インタビューに代替させる。アンケート調査では、昨今、文部科学省が今後将来の大学のあり方として提唱する「保護者や卒業生との相互理解や互恵的協働を反映した大学運営」や「利害関係者(ステークホルダー)も参加する大学評価の多元化」等の考え方とも関わらせ、「保護者組織と大学との相互理解と協働」を調査の視点に織り込んでいる。調査の具体的項目には「大学から保護者への情報提供の状況」、「後援会の事業に関する大学構成員等から理解状況」、「大学に対する保護者組織の要望伝達とその実現度」、「後援会と大学の協働事業の可能性」、「ステークホルダーの意見を反映した多元的大学評価の実施に向けて」、「外部評価や大学教育後援会事業に関する自由記述」などを設定している。 これら調査分析を踏まえ、日本高等教育学会での口頭報告を予定している。さらにこれまでの研究過程で蓄積した知見を踏まえながら、大学教育後援会の成立発展という歴史的経緯をとりまとめた「研究ノート」の投稿を予定している。 この他、研究論文等により、大学教育後援会とそこでの事業を大学評価指標として設定することの可能性に関わる研究的礎石を形成する準備をしておきたい。 なお、本研究成果は、関連組織への還元に意義を見出しており、調査研究結果の積極的情報提供につとめるものとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画申請時の研究計画においては、全国の大学教育後援会(保護者会)を訪問して実施するインタビュー調査を想定し、そのための交通費等を計上していた。しかしながらCOVID-19の全国的蔓延のため、研究者3名の県外出張が困難となり、旅費が未使用のままになっている。研究成果の口頭発表を予定していた神戸大学での日本教育学会も、同様の理由によってオンライン開催となり、旅費を使用することはなかった。このため、未使用経費が発生し、次年度使用額として繰り越されることになった。 感染症蔓延は2021年度も収束する気配ではないため、旅費を中心としたこれら未使用経費は、訪問調査に代わるアンケート調査の経費、収集したデータを分析するためのソフトフェア購入、及びオンライン環境整備のための情報機器購入に充当することを予定している。
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