研究課題/領域番号 |
19K02866
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
堺 完 大分大学, IRセンター, 講師 (10803330)
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研究分担者 |
山崎 慎一 桜美林大学, リベラルアーツ学群, 准教授 (10636674)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 卒業生調査 / 短期大学教育 / 教育成果の可視化 / 大学評価 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続きコロナ禍により短期大学卒業生へのインタビュー調査の実施が困難な状況が続いたため、量的調査である卒業生調査結果を用いてコロナ禍による学修成果等の評価に関する比較分析を実施し、研究報告を行った。 本報告では、短期大学に「2018-2019年度」もしくは「2019-2020年度」に在学し卒業生調査の卒後1年目回答者となった卒業生のうち、卒業生調査2020と2021両方に参加した短期大学に分析対象を絞っている。上記条件に合う短期大学24校のうち、「2018-2019年度在学+卒業生調査2020(卒後1年目)」では770名が該当し、「2019-2020年度在学+卒業生調査2021(卒後1年目)」では825名だった。前者はコロナ禍による教育への影響がほぼない層である一方で、後者は2年生の際にコロナ禍の影響を受けた層であるが、両者において学修成果を示す知識能力の役立ち(変化)や短大教育の総合満足度を示す設問で差がみられるか検証を行った。その結果、総合満足度では有意差はなく、学修成果設問では「異なる文化や考え方を持つ人々を理解する力」や「自己の認識」のみ有意差が確認されたが、「他の人と協力する力」「専門分野や学科の知識」「一般的な教養」「コミュニケーション能力」といった多くの項目では差が確認されなかった。この結果、量的調査結果を見る限り、コロナ禍による教育の差によって、学修成果等の短期大学教育の成果実感には影響を及ぼしていないと考えられる。ただし、卒業生調査への回答は調査依頼数の2割に満たないことを考慮に入れると、短期大学に対して肯定的な評価をする層が多いなど回答自体に偏りが生じている可能性も否定できない。 今後の分析の方向性としては、年度別や地域や専門分野別の比較検討に加えて、複数回参加した短期大学における卒後年数による回答変化など、継続的に検証を行う必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は量的アプローチである卒業生調査の分析を継続的に実施しつつ、前年度から計画を変更した質的アプローチである短期大学卒業生に対してのインタビュー調査及び短期大学関係者への聞き取り調査を計画していた。このうち、就業先のある卒業生に対してのインタビュー調査は新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが変わる翌年度以降に延期を決め、短期大学関係者に対しては、コロナ禍後の教育環境と卒業生との交流状況などについて聞き取りを行いながら、2023年度中に各校の卒業生に対するインタビュー調査への協力を改めて行った。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は前年度実施できなかった短期大学卒業生へのインタビュー調査を行うことする。予定規模としては2~3短期大学であわせて10名前後に対面によるインタビュー調査を予定している。主なインタビュー内容としては、就業経験を踏まえての短期大学教育の成果の実感について、在学時と卒業後での短期大学への評価(他者への推奨度)、就業して気付いた短期大学教育の改善点などである。卒業生へのインタビュー後に、インタビューに同席してもらう短期大学関係者に対して、調査結果を踏まえて教育改善等への活用可能性について、別途聞き取り調査を実施する予定である。 なお、研究代表者の所属機関が変わったことにより、卒業生に対するインタビュー調査を行うにあたって、改めて研究倫理審査を受ける必要がある。2023年度前半までに研究倫理審査を済ませ、年度後半に卒業生へのインタビュー調査を実施するよう準備を進める。 量的アプローチである卒業生調査については、引き続き経年比較や卒後経過年数別の比較分析を行う。またこれらに加えて在学者を対象の短期大学調査と卒業生調査の類似設問比較分析も行いながら、2時点調査結果を可視化して短期大学教育への評価にどう活用できるかなど検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度に予定していた短期大学卒業生へのインタビューが、新型コロナウイルス感染状況の度重なる変化により調査依頼のタイミングを予測することが困難だったため、当該年度での実施を見送った。それに伴い卒業生の居住する地域や短期大学への訪問費用としての旅費とインタビューに応じた卒業生への謝金として計上していた経費への支出もできなくなった。当該年度の差額分については、2023年度内に国内での学会発表以外に短期大学卒業生へのインタビュー調査が可能となった場合、その費用として使用することを計画している。
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