研究課題/領域番号 |
19K02869
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研究機関 | 東日本国際大学 |
研究代表者 |
関沢 和泉 東日本国際大学, 高等教育研究開発センター, 教授 (90634262)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高等教育 / ニュー・パブリック・マネジメント / イタリア / ガバナンス改革 / FD / 大学改革 |
研究実績の概要 |
本研究はイタリアにおける高等教育のガバナンス改革、とくに日本における改革と類似した2010年の改革がどのような影響を与えたかを研究目的としている。研究の第一段階として、背景となる潮流及び2010年以前の改革の状況の調査研究を行った。 イタリアの高等教育のガバナンス改革には大きく二つの背景がある。一つは1980年代に始まる世界的なニュー・パブリック・マネジメントの潮流であり、もう一つはその影響下にあるとはいえ、EUとして実施されたボローニャプロセスである。2010年以降の改革の分析には、1994年以降2010年にかけて、ヨーロッパ大陸型の中央集権的な制度から、徐々に各教育機関への権限の委譲、並行してそのパフォーマンス評価と予算配分を行う方向での改革が進展し、評価機関の設立・改革が続けて行われた過程の位置づけが重要である。 この期間の動きについて調査し、大きく三つの段階で整理することができた。(1)1994年~1998年の、認証評価機関OVSUが設立されるなどして改革ははじまったものの予算の変更などは小規模だった時代。(2)1999年~2003年の新評価機関CNVSUが設立され、大学のパフォーマンスデータの収集と年次報告が行われるようになった時代。(3)2004年~2009年の、研究ランキングレポートの作成に合わせ教育の質も含めた傾斜配分が始まった時代である。次年度以降に繋がる課題は、このように一見したところ、ニュー・パブリック・マネジメント的な方向としては順調に動いているように見られる過程が、どのように2010年の改革に接続されたか、あるいは接続されなかったか、それが2010年改革の分裂した評価にどのように関係しているか、ということとなる。 なお背景の分析として、近隣国フランスにおける改革調査の一端としてFD義務化について並行して簡単な調査を行い、レポートを公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全体としてはここまでほぼ順調に推移している。ただ対象地が新型コロナウイルス完成拡大が酷かったイタリアであることもあり、次年度以降に予定している現地調査に関連した準備は若干の遅れがある。 初年度の研究は、背景となる状況の分析を目的とした文献調査を行った。 2010年以前の改革についての文献については、一部アクセスが困難なものもあり、また現地大手書店では取り扱いがなく、入手に時間がかかるものもあったが、必要な文献については、おおむね収集することができ、分析を続けられている。 収集できた資料の内容としては、2010年以前の改革について、ほぼ同時代的に記録をしたものと、後から振り返って位置づけているものがある。総体的な印象として、2010年以前を分析しきれないうちに、2010年の改革が始まったのではないかという印象が現地の分析についてもあるが、この印象が正しいかどうかは次年度以降の課題となるだろう。 一点だけ問題点は、年度末に向けて、次年度に実施を予定していた現地での聞き取り調査のためのコンタクト等の準備を進める予定であったが、新型コロナウイルスの影響がイタリアでは大きかったため、その点がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、2010年の改革の状況の分析に入る。 2010年の改革については、イタリアの大学関連の団体による資料も多くなり、一見したところ調査はしやすくなるものの、その評価については現地でも大きく分かれる。 調査の大きな方向性としては、本年度に実施した、2010年以前の改革は、さまざまな試行錯誤は見られるものの、ニュー・パブリック・マネジメント的な方向としては一貫して積み上げられてきたように見えるものの、2010年以降の改革は、それを実質化するためのガバナンス改革を標榜しながら、イタリア国内でも否定的な見解も多いものとなっていることをどのように分析するかである。2010年の改革は、学長への権限集中といった、日本と類似した方向性のものであったが、これが実際に機能したのか、機能しなかったのかが問題となる。それを通して、何がこうした改革を成功させる条件であるのかを取り出していくことを目指す。 なお、こうした点については、現地での聞き取り調査も必要と考えており、計画しているが、新型コロナウイルスの状況によっては、日程の調整等が必要となってくると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計画通りに推移したが、一部、発注依頼後入手困難で入手できなかった資料もあり、若干の次年度使用となった。 次年度は、引き続き、必要文献の収集費用として使用予定である。
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