研究課題/領域番号 |
19K02879
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
邑本 俊亮 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (80212257)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 防災教育 |
研究実績の概要 |
コロナ禍で、学生たちが被災地を訪問し被災者との交流を行うことができず、さらに学生たちが教育実践を行う場(学校)も見つかりにくい状況が続いている。そのため、2019年度に実施した、学生たちの被災地訪問による課題発見解決型学習と防災教育実践(東京の公立中学校での実践、3種類の授業)について、その有効性を分析・考察した。災害の記憶や教訓を伝承する上で障害となるのは、受け手側の「リアリティの欠如」と「他人事意識」である。学生たちの多くは震災を直接経験していないが、被災地での実習を行うことによって震災のリアリティを感じることができた。また、復興のための課題を自ら解決する方法を探究することで、震災を自分事として考えるきっかけとなっていた。さらに、学生たちが開発した授業においても、地域に特有の災害(首都直下型地震)に焦点を当てたり、認知バイアスが自分の身近にも起こりうるということをクイズ形式で紹介したりして、生徒に自然災害を自分事として強く意識させる授業となっていた。以上の研究成果を、アジア防災センター主催の第2回ADRCオンラインセミナーにおける講演にて、国際的に発信した。 一方で、専門家による防災出前授業の教育効果(持続性と波及)に関しても研究を行った。沿岸部の小学校(6校)と内陸部の小学校(9校)とで比較を行い、防災教育の効果の持続性は限定的であること、沿岸部の学校のほうが内陸部の学校よりも防災意識が高いことを明らかにした。また、防災教育後の行動の積極性には、防災に対する学習意欲、減災に対する自己効力感などが正の影響を、災害に対する恐怖心が負の影響を与えることを明らかにし、論文にまとめた。 さらに、コロナ禍の中で実施したICTを利用した防災教育実践3種類の特徴やメリット・デメリットに関して比較検討を行い、国際学会にて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大学生が被災地訪問をして震災や復興について学び、自分たちの力で防災教育の授業を企画して他地域で実践する研究(被災地での学びを地域や世代を超えて伝える災害伝承・防災教育システムの開発)は、コロナ禍によって進展していないものの、すでに行った実践についての詳細な分析を行い、成果を国際発信できた。また、専門家による防災教育実践の教育効果およびその持続性について調査した研究やICTを利活用した防災教育実践研究が進展し、成果を上げている。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症が収束した場合には、学生を募って「被災地での学びを地域や世代を超えて伝える災害伝承・防災教育システムの開発」研究を行うが、そうでない場合には、ICTを利活用した防災教育実践の蓄積とそれらの比較検討を行い、持続可能な防災教育実践について検証を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、学生による被災地訪問や学校での実践ができなかったため、旅費・謝金の使用がほとんどなかった。次年度に関しては、専門家による防災教育実践の要請はあるので、その教育効果の検証を行うための研究に使用する。
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