研究課題/領域番号 |
19K02899
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
須長 一幸 福岡大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (10419955)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アクティブ・ラーニング / スタディ・スキル / 否定的能力 / 発問能力 / 開いた理解 / オルタナティブ |
研究実績の概要 |
今年度は、「発問能力の段階的育成に向けた教育法の開発研究」に関して主に二点の進捗があった。これまでの研究では、発問能力の中核に「目標構想能力」を位置付けたが、この能力には、第1段階となる「そこにない何か(=オルタナティブ)をイメージする」という要素(なんらかの問いを生み出す契機となる部分)、第2段階となる「何をイメージすればよい問いが生み出されるのか」を吟味する要素(さまざまな潜在的問いを「よい問い」へと向上させる部分)があることを明らかにした。 今年度の進捗の一つ目は、まず昨年度までに学会発表を通じて検討してきた第1段階の契機的部分の育成に向けた教育法の開発結果を論文としてまとめたことである(「「問い」を立てる能力をいかにして開発するか ―高等教育における発問能力の育成に向けた予備的・哲学的考察2―」『福岡大学人文論叢』第55巻4号)。 進捗のもう二つ目は、第2段階の育成の開発のための条件整理を行い、これを学会発表において報告したことである(「「問い」を立てる能力をいかにして洗練するか」大学教育学会第45回大会発表)。ここでは、知識獲得の段階において、発問につながるような学びの形態(=「開いた理解」を促す学び)が存在することを指摘し、そうした形態の学びの実現に向けた考察を行った。 以上を踏まえて、第1段階、第2段階を通じた発問能力の開発に関する総合的なまとめを行うことが、本研究の最終的な課題となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度は比較的順調に研究が進行しており、成果も得られているが、当初予定していた、発問能力育成法の第2段階の開発には至らず、そのための条件整理に留まったため、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、これまでに実施してきた本研究の柱である「発問能力に関する哲学的研究」と、「発問能力の育成のための初年次教育のコンテンツ開発」を継続して実施するが、特にコンテンツ開発については、これまで学内の正課のプログラムの中で開発・実施してきた初年次学生向けのワークの教材化を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
これまで、令和2年度のコロナウィルス感染症の拡大に伴う各種の緊急事態的状況によって研究計画の遅れが生じ、これに伴って研究費の使用の繰り越しが発生した結果、研究計画、研究費使用計画のいずれについても2年延期する形で変更を行ってきた。次年度使用額が生じることとなった理由としてもっとも影響のあったものは、この令和2年度以降の計画の変更によっている。ただし、計画変更後の研究の進捗は以降令和5年度まで比較的安定している。 なお、令和3年度に予定していた海外出張はコロナウィルスの感染拡大防止の観点からこれを中止し、令和4年度についても同様の理由で視察出張は行わなかった。結果的に、視察調査を行わない方向で研究計画を変更したため、最終年度である今年度も成果報告以外の出張は原則行わない。研究は、研究代表者が所属する大学での開発研究に注力する形で行い、研究予算の次年度使用については、成果報告、教材開発、コンテンツ作成、の3つを目的とし、それぞれ成果発表のための学会出張(旅費)、教材開発に関わる書籍・物品の購入(消耗品等)、コンテンツ作成費(印刷費等)、に充てることを予定している。
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