研究課題/領域番号 |
19K02903
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
廣田 栄子 筑波大学, 人間系, 名誉教授 (30275789)
|
研究分担者 |
大原 重洋 聖隷クリストファー大学, リハビリテーション学部, 教授 (90758260)
中津 真美 東京大学, バリアフリー支援室, 特任助教 (90759995)
野原 信 帝京平成大学, 健康メディカル学部, 講師 (60720836)
岡野 由実 群馬パース大学, リハビリテーション学部, 講師 (60785393)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 軽中等度難聴児 / 人工内耳装用児 / 学校生活QOL尺度 / 学童期課題 / 発生機序 / 言語発達支援 / 移行支援 / 家族支援 |
研究実績の概要 |
1)既に軽中等度難聴(MMHL)児の学校生活QOLについて27項目の評価尺度を作成し,22年度は,聴力正常学童(3~6年)240名の母親評価資料を採取した。適応課題,学業成績,読書習慣,兄弟,母親の最終学歴・就労等の要因の関与と,年齢別の評価基準について検討し,学童期課題の特性と支援適応の判断にかかる比較資料を得た。 2)就学前後期のMMHL児13名と人工内耳装用(CI)児5名について言語発達の形式と語用(CCC-2)を評価した。語彙形式30.1%,コミュニケーション能力69%で遅滞し,音韻と文脈利用領域に課題を示した。難聴診断が早い程,良好傾向を示し,成長と共に向上したが,幼児期には多側面な言語能力について支援ニーズの評価が必要と指摘した。 3)学童移行期のMHL児5名と高重度児5名のナラティブ発達について評価した。MHL児はマクロ構造の構成要素に高重度児よりむしろ遅滞を示した。ミクロ構造の結束性に差異はないが,異なり語彙表現に乏しく,療育開始年齢の遅れと養育者の会話能力が関与した。書記言語移行に向けて養育者と連携し,世界知識や社会認知能力を踏まえたナラティブ支援の重要性を指摘した。 4)MMHL幼児の保護者15名の難聴診断から療育までの心理状態について,エジンバラ産後うつ病票,難聴児療育意向と障害受容について調査し,個人属性等を分析した。難聴診断時には80%の保護者でうつ状況を報告し,専門的助言,ピア交流など心理・療育的支援の必要性を指摘した。 5)高等教育期のMMHL者7名とCI者8名において聞こえの主観的評価(SSQ-12)と自己・他者受容尺度評価を求めた。聞こえの課題,他者受容には特徴がみられないが,自己受容面が低く,聞こえの評価と相関して低下した。難聴を恥じる,自己同一性の揺らぎ,周囲の無理解による疎外感等、自己受容に課題を呈し,小児期からの介入の重要性を指摘した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染症(COVID-19)拡大状況下に、学童児を対象とした研究活動に制約が多く、軽中等度難聴児の適応上の調査実施が困難な状況にあり、当初の研究計画実施が遅滞した。
|
今後の研究の推進方策 |
1)軽中等度難聴における学童期課題について,継続した研究で資料を得て作成した学校生活QOL尺度の具体的使用法と支援基準などを策定する。 2)さらに,幼児期,小学校就学移行期,高等教育機関における本研究のエビデンスに基づいて指摘した,軽中等度難聴児の課題の発生の機序について統合し,幼児期から一貫した言語発達と心理社会的発達を含めた支援要件について検討する。 3)近年、要請されている新生児聴覚スクリーニング検査の普及により,医療・療育・教育の連携による切れ目のない支援,および家族連携にかかる臨床指針について提言に結び付ける。 4)22年度までに実施した,本課題の中核的な研究について,学術大会での協議と論文発表を行い,臨床的妥当性と有用性について討議し総括する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
・2022年度までに実施した研究の学術研究大会での協議と追加資料の収集、および論文発表に要する費用が必要となる。
|