研究課題/領域番号 |
19K02906
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
後藤 隆章 横浜国立大学, 教育学部, 准教授 (50541132)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 発達性読み書き障害 / 遠隔教育 / 読みの代償的方略 / 語彙 |
研究実績の概要 |
発達性読み書き障害児における読み困難の背景要因として音韻処理の苦手さが影響することが指摘されている。一方、発達性読み書き障害の事例の中には、読みの代償的方略を形成して活用することで、苦手とする音韻処理に基づく読み処理ではなく、その他の代償的方略を用いて、読み処理を行う事例も報告されている。そのため、様々な学習環境のもとで発達性読み書き障害児を対象とした読みの代償的方略の形成を促進させるための支援教材の開発は、特別支援教育において重要な課題である。 そこで、本研究では、語彙理解に困難を示す発達性読み書き障害児に対して語彙サイズの向上を図り、読み課題における意味的プライミング効果サイズが最大となる支援条件を明らかにする。その上で、遠隔教育で適用可能な読みの代償的方略の形成を目的とする支援教材を開発する。開発した遠隔教育型読み支援教材に関しては、通級指導教室の発達性読み書き障害児を対象に支援実施に伴う効果判定の基準を明らかにする。そして、日本人学校の発達性読み書き障害児に対して支援を実施し、有効性を検証する。 2019年度は、発達性読み書き障害の読み書き困難の評価を行うための評価基準値について検討を行い、小学校低学年における発達性読み書き障害の読み困難背景要因について検討を行った。また、発達性読み書き障害児3名を対象に情報通信機器を活用した読みの遠隔指導を実施し、実施環境について整備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
発達性読み書き障害の読み困難の背景要因について検討するために、小学校低学年を対象とした読み書き調査を実施し、発達性読み書き障害児に対する遠隔教育の効果判定に必要となる読み書き課題の基準値を検証した。 また、発達性読み書き障害事例3名を対象に、情報通信機器を活用した遠隔授業を実施し、実施環境や条件について検証を進めた。 一方、通級指導教室に通う発達性読み書き障害児を対象に研究協力を得て、読みの代償的方略に関する遠隔授業による支援の実施し、語彙タイプ別の読みの代償的方略の形成条件を明らかにすることを計画していたが、遠隔支援で用いる教材作成の制作が遅れたことや新型コロナ感染拡大による影響による通級指導教室の登校自粛が行われたため、予定通りに実施することができておらず、計画よりもやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、語彙能力に困難を示す事例において意味的プライミング効果量の増加が認められた語彙支援条件を含めて、遠隔教育で適用可能な読みの代償的方略の形成を図る支援教材を作成する。この支援教材では指導者と学習者の画面共有機能と音声通話機能を用いた学習内容とし、対面指導で活用していた読みの代償的方略の形成を目的とする支援教材を遠隔教育で適用できるように課題内容の修正を図る。なお、課題内容は学習者の語彙能力に応じて支援手続きが最適化されるようにする。作成した支援教材を用いて、通級指導教室の発達性読み書き障害児に対して実施し、その語彙能力別の支援効果基準値を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は、教材開発に必要としたソフト選定に時間を要してしまい、結局既存のプログラムソフトを用いて試行プログラムを作成したため、購入しないことになった。 また、複数の通級指導教室での測定を予定していたが、新型コロナ感染拡大に伴う社会情勢によって、測定の協力が得られず、学校に訪問しての測定が行えなかった。 次年度では、複数の測定場所での測定が可能になるように課題で必要となる機器を増やすとともに、研究協力が得られた学校から、順次、訪問して測定を実施する。
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