これまで発達性読み書き障害児が示す読み困難の背景として、音韻情報の操作や処理の困難が指摘されており、音韻操作能力の向上を目的とする支援が行われてきた。一方、単語の意味的理解の促進を図ることで単語全体のまとまりに基づいた読みが可能となり、単語の読みが改善される事例が報告されており、その背景に読みの代償的方略が関与するとされている。日本語における読みの代償的方略の形成に関する研究では、単語の意味情報の処理を先行的に行うことでその後の単語の読み処理が促進されることが認められている。 本研究では、語彙理解に困難を示す発達性読み書き障害児に対して語彙理解の促進を図り、読み課題における意味処理が最大となる支援条件を明らかにする。その上で、遠隔教育で適用可能な読みの代償的方略の形成を目的とする支援教材を開発する。開発した遠隔教育型読み支援教材に関しては、発達性読み書き障害事例を対象に支援実施に伴う効果について検討を行う。そして、専門的支援にアクセスするための制約があるとともに、外国につながる子どもも含まれるなど学習困難を引き起こすリスクが多様である学習集団への学習支援効果について検討を行う。 2023年度では、外国につながる児童や発達性読み書き障害当事者を対象に遠隔指導やプリント教材を用いた読み書き支援を実施し、その効果について検証を行った。その上で、読み書き支援が十分にアクセスできない学習環境の発達性読み書き障害児を対象に適応可能な学習手続きについて検討することを目的とする。
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