本研究の目的は障害者にとって効果的な救急救命講習の教育を明らかにして、障害者のための救急救命講習に資することである。 全国の特別支援学校における救急救命講習の教育の取り組みの調査を実施した。児童生徒向けの講習を実施している学校は22.0%であった。児童生徒向けの講習の工夫としては、視覚障害においては拡大した手順書やモニターの準備、聴覚障害においては手話通訳の使用、字幕付きAEDの使用、文字情報による情報保証、音の振動の利用、生体反応の確認の仕方の工夫などが指摘された。特別支援学校の教職員向けの講習は、年に1-3回の講習の開催によりほぼ全ての教職員が習得できるようにされていた。さらに自由記述について定量テキスト分析を施行した。救急救命講習の意義として、命を守る方法や大切さを学ぶ、緊急対応の知識を身につける、実際の場面を想定して講習を行う、心肺蘇生法とAEDを体験する、周りの人に助けを伝えるなど、障害のある児童生徒に対する救命講習にあたり、理念や基本的な目標を明確にして、体系立てたプログラムが必要と考えられた。さらに障害のある方にとってのAEDに関する自由記述について定量テキスト分析を施行した。AEDの機器自体に対しては、聴覚障害のある方には文字による表示で情報を指示する、音声ガイドの手順だけではなくボタン操作などを視覚で分かるようにするなどのユニバーサルデザイン化が望まれていた。さらにAEDを含めた実習の在り方についても、講習の前に事前学習をすすめておくこと、実際の校内のAED設置場所を説明し実際の場面を想定することなど体系立てたプログラムが必要と考えられた。 これらの調査研究により全国の取り組み状況や現状と課題を把握でき、障害者にとって効果的な救急救命講習の教育の要諦が明らかになった。
|