研究課題/領域番号 |
19K02911
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
松浦 直己 三重大学, 教育学部, 教授 (20452518)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 児童自立支援施設入所者 / 非行 / 発達障害 / 被虐待 / 矯正教育 / 効果評価 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、対象児を入所時と退所時にMRIで評価し(多様な行動・心理尺度評価と組み合わせる)、深刻な被虐待経験を有する非行少年の神経学的リカバリーメカニズムを解明することであり、矯正教育効果を検証することである。研究対象施設である神戸市立若葉学園は児童自立支援施設であり、夫婦小舎制を採用している。夫婦小舎制とは深刻に非行化した少年らを疑似家族的環境で再教育することにより、非行性の除去や様々な対人関係スキルを構築させることを目指している。 本年度はこの児童自立支援施設の構造化について研究を進めた。対応の難しい子ども達に適切な教育を提供するためには、教育環境の構造化をどのように進めるかが重要である。構造化は2つの軸で説明できる。1つは「厳守すべきルールの透明度」で、もう一つは「やるべきことの明瞭度」夫婦小舎制では、教育環境の構造化のカギを握るのは夫婦である寮長と寮母である。交替制の施設と比較すると、夫婦小舎制では、入所対象児に対してこの2つの軸の到達度や達成度を明瞭に示すことが容易かつ簡便であることが示唆された。この成果は決定的に重要であると思われた。なぜなら、構造化の水準を高く設定することこそが教育効果を高めることにつながることである。 今後はこのモデルが本施設のみならず、他の児童自立支援施設、そして他の教育環境(少年院や学校教育)でも応用可能かを検証する必要がある。 調査では協力施設である神戸市立若葉学園の協力を得て、順調に対象者に研究協力を依頼し、心理検査等実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在少年院の協力が滞っている。またコロナウイルスの関係により、施設に入所することができず、十分な情報交換ができない状態である。 2020年度、2021年度は毎年30名程度のMRI検査を実施することができる予想である。また2021年に国際学会で報告する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後2年間で各種の心理検査やMRI撮影を蓄積していき、その分析を実施する予定である。神戸市立若葉学園では年間40名程度の入所者が存在するが、丁寧に本人および保護者に対して説明を行い、研究協力をお願いし続けていく。 神戸市立若葉学園では、小学生寮を設置している。発達や愛着の問題を抱えた子ども達にとっては、夫婦小舎制の寮生活は効果的であろうと予測される。教育環境の構造化の視点からも、小学生寮の治療教育的効果測定を視野にいれて研究する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
協力施設である神戸市立若葉学園の入所者の内、同意書を得られた方が想定よりも少なかった。また2月以降コロナウイルスの関係により、出張等(学会出席も含め)が限られたことが理由として挙げられる。
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