研究課題/領域番号 |
19K02911
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
松浦 直己 三重大学, 教育学部, 教授 (20452518)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 少年非行 / 行動の問題 / 被虐待 / MRI / 神経学的変容 |
研究実績の概要 |
本研究の重要性は、非行化した少年(多くは身体的虐待やネグレクト等、深刻な不適切養育を受けてきた)らが、夫婦小舎制を採用している児童自立支援施設に入所し、寮長や寮母らの施設スタッフと生活を共にする中で、どのような心理的・行動的・神経科学的変容を示すのかを検証することである。本研究の目的は、「入所児童・少年」が疑似家族的活況で学習し、生活し、社会生活を営む上で、どのような改善を示すのかを検証することである。日本の矯正教育の効果評価研究としては、極めてユニークかつ重要であると考えられる。対象施設との十分な連携及び協力を基盤とし、かつ対象少年とその保護者らへの十分な説明を実施した上で、以下の様な調査を実施してきた。 ①CBCL(子どもの行動チェックリスト) ②各種心理尺度(自尊感情尺度、うつ尺度、解離得点等) ③精神医学的構造面接(MINI-KIDS) ④構造的MRI撮影 このような評価を通して、子ども達の施設入所期間中の、心理的・行動的・神経科学的変容を評価している。我々の仮説は、「疑似家族的な環境で約1年半程度生活した子ども達は、様々な面で劇的な改善を示す」というものである。これらのことを検証するために、質問紙や検査を実施し、施設全体の教育効果を評価するのである。これまでにこのような多面的評価尺度を実施し、更にMRIを実施して神経学的変容まで評価した研究例はない。よってこれらのことからも本研究の重要性が明瞭である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小学生の入所者が増加して、MRI撮影の同意者が減少したが、全体として入所時と退所時の質問紙等の評価は順調に蓄積している。知能検査の結果からみると、約1年半程度の入所により、学習面でも顕著な改善を示したが、IQも約15程度伸びている。これらは驚くべき結果であるが、矯正教育の結果、IQが伸びたと言うよりも、構造的な環境と、疑似家族的な治療により、本来彼らが持っている潜在的能力が引き出されたと解釈すべきであろう。 現在は神経学的変化と共に、それらの行動・心理データとの関連を分析しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は堅実に入所児童や保護者の説明を行い、同意を得つつデータの蓄積を図る。入所時と退所時のデータセットを用いて、心理的・行動的・神経科学的変容を分析していく。縦断的研究であることから、かなりの時間がかかるが、丁寧にデータ蓄積と分析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症の拡大により、出張等に大きな制限がかかったことや、学会発表(特に国際学会参加)ができなかったことにより、当初の予定の支出が不可能になった。 (使用計画):現地調査及び成果発表に使用する予定である。
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