研究課題/領域番号 |
19K02918
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研究機関 | 福山市立大学 |
研究代表者 |
平野 晋吾 福山市立大学, 教育学部, 准教授 (90571654)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / 生活リズム / 入眠状態 / 環境適応 / 睡眠記録 / 脳波 / 睡眠・覚醒調節 |
研究実績の概要 |
本研究は,自閉スペクトラム症(ASD)児者やその家族における代表的な愁訴の1つである入眠困難の特徴を明らかにし、生活リズムの形成や改善のための個別支援計画立案に資するアセスメント法の開発を目的としている。本年度は,子どもの入眠困難に間接的な影響を与えると考えられる学校適応感と生活リズムとの関係について調査を実施した。また,これまでに実施した文献研究と基礎研究の成果を,以下に示す①睡眠の調節機構,②ASD児者の睡眠及び生活リズム,③環境との相互作用による睡眠の変化の3点の視点からまとめ公表した。 ①覚醒から睡眠への移行期に,積極的に睡眠を引き起こそうとする脳機能の存在を想定し,参加者を増やしながら脳波アルファ活動とタッピング課題における行動変容の関連を分析し,行動の連鎖が崩壊していく過程に一定の傾向があることが示された。 ②ASDのある幼児1名,小学生3名,中学生1名の研究参加を得て事例研究を継続した。幼児1名(3歳児)の生活リズムについて睡眠日誌法を用いて記録し,分析を行うとともに,保護者の睡眠や生活リズムに関する長期的な発達に関する知識獲得を支援した。その結果,夜間の入眠困難,中途覚醒,自傷行為,再入眠困難の頻度が減少したが,長期的にみると周期的に入眠困難や中途覚醒が増える時期があることも示された。 ③大学生を対象として,日中に参加者にとって新奇性の高い,非日常的な環境で生活した場合に,短期的に睡眠にどのような影響があるか事例検討した。その結果,レム睡眠率の増加とレム睡眠中の夢報告率の減少が示された。今後は,ASD傾向のある人など,新奇な環境への順応が苦手な個人に対する睡眠・覚醒リズムのアセスメントに新たな視点を加えるために,睡眠中の情報処理過程等にどのような特徴があるのか明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍によって,ASDのある参加者の生理心理学的データの収集は困難であったが可能な範囲で増やすことができ,加速度計や質問紙などを用いた一定数のデータ収集が他大学との研究協力体制の中で可能となった。また,これまでの成果の一部を学術書にまとめることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となるため,ASDのある人の入眠状態における特徴と日中の活動や生活リズムとの関係について分析する。学齢期のASD児の学校生活と入眠との関係について明らかにすることで,夜間の生活のみに着目した睡眠のアセスメントから,生活全体を見通したアセスメントへの転換することの意義について検証を試みる。 また,特にASD児者のデータ収集及び分析も継続して実施しつつ,次年度以降の研究計画につなげる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で未使用率が高かった旅費と人件費を2022年度に一部執行したが,2021年度までの影響が大きく,一部未使用分が残っている。最終年度は,旅費等に使用する予定である。
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