本研究では、1890-1920年代のアメリカで展開された新学校・進歩主義学校および地域支 援活動としてのセツルメント活動を対象に、特別な身体的・教育的ニーズのある子どもの身 体活動や体育・スポーツ活動の観点からその取り組みを明らかにすることを主な目的とした。 1年目の2019年度は、2020年3月に米国への資料調査を計画していたが、コロナ禍による感染拡大のため渡航を断念した。しかし、2019年度は以前より分担で翻訳していたデューイの著作集が出版された(東京大学出版会、明日の学校、ほか)。 2年目の2020年度は、2019年度中に取り組んでいたシカゴのハル・ハウスに関する1890-1907における身体活動の支援活動について論文を執筆した(大学紀要)。 3年目の2021年度は、海外への渡航制限が続くなか、オンライン形式で日本デューイ学会第64回研究大会の公開シンポジウム「インクルーシブ教育と民主的社会の未来」が開催され、「デューイの教育理論におけるインクルーシブ教育の特徴」について報告を行った(2021年9月)。デューイの「民主主義と教育」(1916)の「第4章 成長としての教育」から、生活は発達であり、発達・成長するという教育の過程は連続的な再編成改造を伴う変形の過程であることを確認し、プロセスとしてのインクルーシブ教育と共通の構造を持つことを示した。 また2021年8月にはコロナ禍で延期されていた国際学会ISCHEで学会発表を行い、1889-1915年のハル・ハウスで移民や民族的マイノリティの子どもがスポーツや余暇活動に参加し、聾者など障害のある人と交流していたことを示した。 研究期間を1年間延長し、2024年発行予定の日本デューイ学会紀要第64号に『明日の学校』(1915)における身体活動・体育の教育実践に関する検討を投稿し、査読を経て採択された(2024年5月現在、印刷中)。
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