研究課題/領域番号 |
19K02928
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
村中 智彦 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (90293274)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | チームティーチング / 協働支援 / 授業づくり / 知的障害 / 自閉症スペクトラム障害 |
研究実績の概要 |
文献レビューより、知的障害特別支援学校のチームティーチング(TT)にもとづく授業づくりの国内文献は10編でいずれも教育実践であった。TTの機能を妨げる要因として、教師間の打合せや準備時間の不足、教師個々の子ども観や指導観に関わる共通理解の困難が多く示唆されていた。TTの機能を高めるには、子どもの実態や指導計画に関する教師間の共通理解が重要であり、TTの長所に着目した項目表(福山,2018)の活用評価の有効性が報告されている。インクルーシブな教室環境における協働支援の研究より、教師間の日常的なコミュニケーション、協働的な指導計画の立案と修正、各教師の内省や自己評価等の重要性が示唆されていた。学業成績への影響では、TTにより児童生徒の書字や算数の成績は促進される(Tremblay, 2013)、TTと成績に直接的な影響はない(Murawski, 2006)報告に分かれていた。2020年度では、大学附属研究センターで、特別支援学校の授業場面をシミュレートする小集団指導を実施した。参加児はダウン症女児2名とASD男児2名で、保護者に研究依頼を行い同意を得た。2020年6月~2021年1月の6ヶ月、週1回、約1時間半、22セッションを実施した。始めの会、サーキット活動を実施し、サブ指導者(ST)の人数を4、2、1名の順に減らして位置取りや役割分担を変更した。TTの長所項目表を活用し、支援内容や手だてを評価した。ビデオ録画より、STの支援行動の対象と内容、支援時間を評価し、参加児の課題遂行レベルを評価した。その結果、STの最も多い4名の個別支援の条件で課題遂行に直接関係しないSTの働きかけが増え参加児は後方のSTを見たり働きかけに応答し課題遂行は妨げられること、STの個別支援から活動分担に変更することでST同士のコミュニケーションが増加し参加児の課題遂行が高まる結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度に予定していた特別支援学校の授業場面を対象とした観察による生態学的調査は感染対策に伴う受け入れ先の事情より実施困難となった。そこで2021年度に予定していた大学附属研究センターでの知的障害やASD児を対象とした特別支援学校の授業場面をシミュレートした小集団指導を実施した。2021年度は対象校を県内に限定した生態学的観察調査を実施し、併せて、大学附属研究センターを活用する臨床研究を参加児や指導場面を変更し、継続的、系統的に実施する。2019~2020年度に行った文献レビューは学術雑誌または大学紀要への投稿を計画している。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に計画していた知的障害特別支援学校の授業場面を対象とした観察による生態学的調査を実施する。対象校は研究代表者の学校コンサルテーション経験より、県内3~4校とする。訪問可能で実施可能の回答を得た学校とする。調査期間は2021年9月~12月とし、小・中・高等部の低・中・高の学級ごとに1~2日間、代表者と調査補助2名の大学院生がチームとなり、授業場面の観察調査を行う。教室内で直接観察を行う観察者が教師や子どもに働きかけを行わない非交流的観察とする。評価チェックシートを用いて、協働支援の類型にもとづくメイン・サブ教師の位置取りや動線、児童生徒や教師間のやりとりの内容を事象見本法で記録する。併せて、2021年6月~2022年1月で、研究計画を立案した当初予定していたTTによる支援に焦点を当てた授業改善を目的とした学校現場との協同的な実践研究を行う。協力校は2校(兵庫県、青森県)とし2020年度に事前の予備研究を行った。代表者は、授業改善のプロセスに積極的に関与し、分析作業と結果にもとづく授業改善に向けた予測と提案を行う。特定の授業を定点観察し、ビデオ録画をもとに協議会を行い、TTが効果的に機能するサブ教師の役割や教師間のコミュニケーションを中心に協議する。協議は学校訪問及び月1回のズームによるオンラインで行う。併せて、大学附属研究センターにおいて、知的障害・ASD児を対象とする実践研究を継続的、系統的に行う。参加児は地域の特別支援学校や特別支援学級に在籍する知的障害やASD児5名とし、年齢は小学校期とする。小集団指導を設定し、指導者(代表者と院生)は2~4名とする。期間は2021年5~12月で、指導は週1回のペースで25セッション、1時間程度を実施する。サブ教師の位置取りと動線、教師間のやりとりを実験的に操作し、参加児の課題遂行や逸脱行動に及ぼす効果を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用が生じた理由は、年度当初予定していた知的障害特別支援学校の授業場面を対象とする観察による生態学的調査の実施に関わる院生の調査補助費及び謝金、消耗品費、協力校への調査旅費が生じなかったからである。また、2019年に行った文献レビューの発表を予定していた学会(特殊教育学会・福岡県)がオンライン開催になり国内旅費を使用しなかった。2021年度では、2020年度に計画していた観察による生態学的調査を実施するにあたり、見附市、長岡市、十日町市の調査旅費、院生の調査補助及び分析データ入力の謝金で使用する。また、学校現場との協同的な実践研究を実施するため、協力校2校(兵庫県、青森県、それぞれ1~2回)への旅費を必要とする。授業記録及び分析のため、消耗品費として、記録用のビデオカメラ、データ管理用ポータブルハードディスク及びSDカード、教材作成用カラープリンター等を購入予定(2校に1セットずつ、研究期間のみ貸出)である。2020年度の臨床研究の成果を学会発表する国内旅費を必要とする。院生の分析データ入力の謝金を必要とする。
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