本研究は,発達障害学生がその障害特性から就労に関して多くの困難を抱えているという事実から,大学から社会へ移行する間の支援プロセスに着目し,発達障 害学生自らが「自分の障害特性を理解し,他者に説明し,自分が必要とする支援を他者に求めていく行動を起こせる力」,すなわち,セルフ・アドボカシー・ス キル(以下、SAS:自己権利擁護力)の獲得を目指して,支援者の支援方法や学外の就労移行支援事業所(就労支事業所)と連携した支援の在り方について研究を行うことを目的とする。 従来の発達障害学生支援は,各自の障害特性に応じた対処療法的な支援が中心であった。しかし,大学から社会への移行を見据えた支援では,障害学生自らが障害特性を理解するとともに,自らの障害特性に合致した仕事の理解という教育的アプローチからの支援が欠かせない。このため,就労について豊富なノウハウを持つ就労支援事業所と連携することで,修学支援から就労支援,さらに就労後のフォローアップを含めた包括的・長期的な支援を含む実効性の高い教育プログラムを研究し,障害学生の大学から社会への移行がさらに円滑になることを目指す。具体的には就労支援事業所との協議を通して,移行支援における機能や役割について相互理解を深めるためにこれまでに8つの就労支援事業所(以下、事業所)および3つの大学を訪問調査を実施し、大学と事業所との連携の可能性や各事業所の機能について訪問調査を実施した。また、事業所において研究開発したSAS獲得を目指した教育訓練を実施し,プログラムの有効性を検証するための打ち合わせを実施した。 2年間研究補助期間を延長した関係で本年度末が補助期間の最終年度を迎えるために研究全体のまとめとこれまで実施できなかった海外調査を実施し、その分析結果を含めた本研究全体のまとめを実施した。
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