研究課題/領域番号 |
19K02940
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研究機関 | 仁愛大学 |
研究代表者 |
水田 敏郎 仁愛大学, 人間学部, 教授 (00340034)
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研究分担者 |
伊藤 沙央里 仁愛大学, 人間学部, 助手 (60845139)
氏田 麻美 仁愛大学, 人間学部, 助教 (10782229)
大平 壇 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (30322283)
大森 慈子 仁愛大学, 人間学部, 教授 (90340033)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 動物との接触 / 手・指の運動 / リラクセーション / 発達障碍 |
研究実績の概要 |
知覚-運動系機能に問題を抱える発達障碍児の行動調整機能改善のための「動物との接触行動プログラム」構築を目指し、ヒトが動物に対して示す行動に関する検討を行った。 1)大学生の動物飼育経験調査:大学生211名を対象に飼育経験のある動物種と飼育期間についてアンケート調査を行った。その結果、何らかの動物飼育経験がある者は約半数の100名(47%)にのぼった。ハ虫類以上に限った種の内訳は、犬が最多で55%、次いで猫(20%)、ハムスターなどの小型哺乳類(19%)が続いた。飼育期間は、犬と猫で最長21年、ハムスターなどは3年であり、種の平均的寿命と一致していた。この結果を次年度の「動物への接触時にみせる手指の行動記録」で用いる動物種の選定の参考とする。 2)小学生の指先の器用さと動物飼育ならびに手指の運動経験との関連調査:小学生の指の器用さと手先の運動経験や動物の飼育経験の関連について調べるため、4種のテストからなるバッテリの開発・実施に取り組んだ。2種類の質問紙調査として、「習い事や昔遊びの経験」と「動物飼育経験と期間」を問うものを作成した。2種類の実技系テストとして、折り紙課題と既存の描線テストを実施した。現役の小学校教諭の協力のもと各調査やテストを考案し、妥当な調査バッテリとして機能すると考えられる。 3)動物との間接的・直接的接触がストレス課題後の心的反応に及ぼす影響について:動物との接触はストレス緩和のためのリラクセーション法としても有効とされるが、人畜共通感染症などの問題もあり、誰もが手軽に触れ合えるとは限らない。そこで動物写真や動画に注目し、ストレス反応後のそれらの視聴により生じるリラクセーション効果について、心拍などの生理反応を用い動物飼育経験との関連から検討した。その結果、動物写真などの視聴はストレス緩和に効果的であり、動物飼育経験者で顕著なことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)大学生の動物飼育経験調査:大学生を対象にとした動物の飼育経験調査は予定通り実施することができたが、人数規模が211名とやや少なめである。アンケートの集計は、おおまかなものについては終了したが、クロス集計など詳細な分析を残している。
2)小学生の指先の器用さと動物飼育ならびに手指の運動経験との関連調査:小学生を対象とした指の器用と手先の運動経験などの関連調査は計画・実施までは順調に進んだが、調査実施の最終段階に新型コロナウイルスの感染拡大防止措置として臨時休校が行われた。このため、データ回収が想定していた80%程度にとどまっている。
3)動物との間接的・直接的接触がストレス課題後の心的反応に及ぼす影響について:動物との接触場面におけるストレス緩和効果に関する実験的研究は予定通り行い、学会発表や論文としてもまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、2つ目の課題である「『動物との接触行動』前・後における行動調整能力のアセスメント・システムの開発(基礎的研究)」として、大学生、定型発達児と発達障碍児を対象に「動物との接触行動」前・後において行動調整能力の心理学的・生理学的アセスメントを行う。 1)動物との接触行動時にみられる指運動の分析:動物との自由接触場面でデータ・グローブとビデオにより手指の運動の時系列記録を行い、出現頻度が高い動作を見出し、その運動特徴を無生物を触るときのものと比較、検討する。 2)動物との接触前・後での行動調整能力のアセスメント法に関する検討:データ・グローブと、バルブ圧センサーと脳波記録によって行う。バルブ圧センサーは、対象者が手の内に握ったバルブから押し出される空気量と圧力の時間変化を詳細に記録可能であり、手で握るバルブ圧を段階的に漸増させた際の実際の圧量の計測をする。 3)動物接触時、ならびに前・後における運動準備電位の計測:動物への接触と、バルブ押し直前の脳電位を加算平均処理し運動開始前の脳内準備電位を検出する。圧量の変動に対応した準備過程が運動の前段階においても評価可能かも含め解析を試みる。データ・グローブからは手指の運動の「線型性」からその滑らかさを評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度の2月~3月にかけて、小学生を対象にした指運動に関する調査研究の対象拡大を予定していたが、新型コロナ感染拡大防止のため、小学校や保育園の休校、休園措置がとられた。このため、予定していた調査を中断せざるを得なくなった。次年度使用額が生じたのはこのためである。この調査については、次年度以降に実施する予定である。
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