研究課題/領域番号 |
19K02958
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研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
瀬戸 淳子 帝京平成大学, 健康メディカル学部, 教授 (70438985)
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研究分担者 |
秦野 悦子 白百合女子大学, 人間総合学部, 教授 (50114921)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 幼児期 / 談話能力 / 発達評価 / 言語知識 |
研究実績の概要 |
幼児期の談話能力は、児童期の学習や読み書きとも関連することが示唆されており、その問題を早期に特定することは、談話レベルの問題を持つ子どもの支援にとって重要である。本研究では、これまでの基礎研究をもとに、発達の方向性や談話内容の適切さの判断がより明瞭な課題に絞って談話能力の発達評価法を確立し、特別な支援を必要とする幼児の言語発達支援に活用することを目的としている。 今年度の研究内容は以下のとおりである。 1.本学の倫理審査の承認を得た上で、談話の組織化の程度とコンテクスト依存度の異なる4種の談話課題を選定し、施設長および保護者の研究協力が得られた幼稚園年長・年中児、計50名に対し調査を実施し基礎データを集積した。 2.これまでの基礎調査をもとに、2種の課題を中心に、談話の構成要素と組織化、談話能力と言語知識との関係についての分析を進めた。状況絵の語りの発達過程をみると、発話量は、年齢による有意差はみられなかった。しかし、談話の組織化に関しては、4歳から5歳前半まではほとんど組織化がみられなかったが、5歳後半からは漸次組織化の傾向がみられ、6歳代になると語りの組織化が進むことが示された。同様に、物語の再話の発達過程をみても、5歳前半までは散発的な語りが目立ったが、5歳後半から物語全体に注目し、出来事や主人公の行動を中心に時系列で語る力が急に伸びて6歳で安定する様相がみられた。また、物語の再話課題の指標(基準命題の出現数)と言語知識との関係をみたところ、文の復唱課題の成績と弱い関係が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの基礎研究をもとに、絵の叙述の発達過程、物語の再話の発達過程、言語知識との関係について、分析を行い、19th European Conference on Developmental Psychology(ECDP)、日本教育心理学会第61回総会、日本発達心理学会第31回大会で発表した。また、2020年1~2月に幼稚園年長・年中児、計50名を対象に調査を実施し、基礎データを収集した。現在収集した調査データの整理作業が進行中である。各対象児の発話記録の文字化の作業、データの入力まで終了し、今後、分析を進める予定で、ほぼ予定通りに研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
1.談話能力の発達過程の分析 これまでの基礎研究と新たに調査し集積したデータをもとに分析を進める。談話能力評価のために選出した4種の課題(状況絵の説明、物語の再話、手順の説明、ゲームルールの説明)に関して、談話構造の構成要素、組織化、水準、一貫性といったマクロ分析と、結束性についてのミクロ分析、言語形式(語や統語の複雑さ等)に関する量的分析を行う。そして、年齢群ごとの発達様相を明らかにしながら、談話能力の評価指標作成に向けて、それぞれの課題において有効な発達評価指標の抽出、確定をはかっていく。また、聞き手から引き出される力動的な談話能力について把握するための補助質問を構成するために、これまで収集されたデータの中から、聞き手の反応によって引き出された語りを事例的に抽出し、その質問項目について検討をする。また、有効な発達評価指標が確定したら、課題相互間の発達の関係性や、語彙などの言語的知識(PVT-R絵画語い発達検査、K-ABCⅡの語彙尺度課題、文復唱課題の結果)と談話能力との関係を分析する。 2.調査を継続しデータを集積する 昨年度に引き続き、幼児の調査を実施しデータを集積する予定である。また、特別支援ニーズ児にも同様の調査を実施しデータを集積する予定である。ただし、今年度、新型コロナウィルスの感染拡大状況があるため、調査が実施できるかどうか現状としては不明である。調査が難しい場合には、調査を先送りにし、分析の方を先に進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部検査用紙の購入が不要となったため、37,452円の次年度使用額が生じた。2020年度と2021年度を合わせた研究費の使用計画は以下のとおりである。 物品費 約30万:調査に必要な検査用具の追加購入、および資料分析、編集作業のためPC関連・周辺物品の購入、書籍の購入予定。旅費 約25万:調査のための旅費、および研究成果公開、および関連する研究情報収集のための学会出席のための旅費として使用予定。人件費・謝金 約40万 調査の補助、調査の録音録画記録の文字化と調査資料の入力・整理の補助を行う研究補助者への謝金として使用予定。その他 約15万:会議費、調査や報告書のための印刷費と通信費(切手類)等に使用予定。
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