研究課題/領域番号 |
19K02960
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研究機関 | 相模女子大学 |
研究代表者 |
日戸 由刈 相模女子大学, 人間社会学部, 教授 (40827797)
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研究分担者 |
藤野 博 東京学芸大学, 教職大学院, 教授 (00248270)
米田 英嗣 青山学院大学, 教育人間科学部, 准教授 (50711595)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症(ASD) / 仲間関係 / QOL / メンタルヘルス / 適応行動 / 会話分析 |
研究実績の概要 |
ASD児者は同世代の仲間集団への所属が難しく、孤立しがちである。 学齢期の長期に渡る孤立は、社会適応や精神的健康に深刻な影響を及ぼす。この問題への対応策として、本研究ではASDの学齢児が「対等な仲間集団」に所属することによる心理的影響を明らかにする目的で、次の2つの研究を行う。 【研究1】保護者にアンケートを実施し、仲間集団への所属経験の有無と生活の質(QOL)との関係を検討する。特別支援教育関連セミナーの参加者を対象としたアンケートの調査結果から、通常学級在籍群は特別支援学級在籍群に比べてメンタルヘルスが不良であり、生活習慣の自律度が低かった。この結果の妥当性を検証するために、教育や余暇など発達障害同士の集団への所属経験を持つASD児34名の保護者にVineland-Ⅱを実施した結果、日常生活スキルと社会性の発達に統計学的な関連性が認められた。 【研究2】特定の余暇サークルに所属するASD児の小集団を対象に3年間の追跡調査を行い、相互交渉の観察・記録を通じて協調・共感の観点から社会性の発達を縦断的に検討する。活動3年目となる2021年度は、中1群(5名;IQの平均107.6)および小5群(5名;IQの平均110.2)の各雑談場面での会話を分析し横断的な検討を行った。中1群は前年度の関係性をもとに参加者同士が互いに相手と共有しやすい話題を選択し、相互交渉が持続し、会話全般において異常性は認められなかった。ただし、本人へのインタビュー調査により友人関係についての認識は、先行研究と同様の特徴が認められた。小5群も前年度と同じメンバーであったが、各自の狭い興味関心に基づく話題が選択され、互いの発話への関心が乏しく、自己刺激行動や離席が頻発し、支援者が介在しなければ相互交渉が持続しなかった。 日本発達心理学会にて自主ラウンドテーブルを企画し、研究チームとして研究成果の公表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
【研究1】については、前年度に引き続き、無記名式アンケートを特別支援教育関連のセミナーに参加した保護者等に実施し対象数を増やして検討する計画を立てていたが、コロナウィルスの感染拡大が収束せず、予定していたすべてのセミナーが中止、またはオンライン開催となったため、アンケートを実施することができなかった。 【研究2】については、前年度に引き続き、ASDの小中学生で構成される余暇サークルに参加する中学1年生(5名)および小学5年生(5名)のASD児のグループの雑談場面での会話を分析し、横断的な検討を行った。また、個別場面において、各児から自己認識や仲間関係に関する聞き取りを行い、質的データとして検討を行った。ただし、いずれのデータ収集の方法もオンラインであり、本研究初年度に収集した対面でのデータとの縦断的な比較検討を行うことができていない。 以上より「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
【研究1】については、すでに得られたB小学校の通級に加え、C小学校の通級でも同様のアンケート調査を行う計画を立てている。以上から得られた200件以上の調査結果について、統計学的な分析を行う。また、そこで得られた知見から仮説を立て、Webアンケートを用いた大規模調査を実施したいと考えている。 【研究2】については、2019年度から開始した縦断研究の対象2グループについて、同じ対面でのデータ収集の計画を立てている。そして、2019年度から2022年度までの4年間における各グループの発達的変化について縦断的に検討し、各グループに示された傾向の異同について考察する予定である。 以上から得られた成果を、2022年度の日本発達心理学会で発表する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大のため計画していた複数の通級指導教室に在籍する保護者へのアンケート実施ができなかったため、統計用ソフトSPSSの購入を見送った。また、国際誌への投稿準備の一環としてADOS-2研究用ライセンス取得のための講習会参加費として使用する計画であったが、新型コロナウィルス感染拡大のため講習会への参加が困難となり、研究期間内の参加は見送ることとした。残金の使用計画は、次の通りとする。1点目にSPSSを購入する。2点目に、複数の通級指導教室へのアンケート実施ができなかったかわりにリクルート会社を通したWebアンケートの実施を行う。
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