研究実績の概要 |
【研究1】において、横浜市内の通級指導教室を利用中の保護者による無記名式のアンケート調査136名分を低学年群(73名)と高学年群(63名)にわけ、日常生活行動とメンタルヘルスとの関連性について検討を行った。日常生活行動は12項目を設定し、探索的因子分析を行った結果、3つの背景因子が想定された。第一の因子は仲間、行事など家庭外での「社交」に関連(5項目)、第二の因子は家族、趣味など「家庭での過ごし方」に関連(3項目)、第三の因子は金銭管理、身辺自立など「自律」に関連する(3項目)と考えられた。3因子の尺度得点の平均値をt検定を用いて比較した結果、「社交」のみ低学年群よりも高学年群の方が有意に高かった(t(122)=2.53,p=.013)。 メンタルヘルスは1点(「学校を長期に渡って欠席」)から4点(「毎日元気に学校に通う」)までのスケールで調査し、低学年群の平均は3.60(SD0.83)、高学年群の平均は3.24(SD1.07)、低学年群よりも高学年群の方が有意に低い傾向がみられた(t(133)=2.21,p=.029)。 メンタルヘルス4点満点を良好群(92名)、3点以下を非良好群(44名)とし、3因子の尺度得点の平均値をt検定を用いて比較した結果、良好群の方が「社交」が有意に高く(t(121)=4.96,p=<.001)、「自律」も有意に高い傾向がみられた(t(128)=2.56,p=.012)。発達障害の小学生のメンタルヘルスに影響を及ぼす要因として、従来から指摘されている社交要因のみならず、身辺自立など自律要因も見過ごせないことが、今回の対象児への調査から明らかになった。また今回、低学年群よりも高学年群の方が社交得点が高い反面、自律得点に関しては群間差がなかったことから、自律性の方がより身につきにくいという可能性も考えられた。
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