研究課題
本研究の目的は、以下の3つである。第1に、汎用的な問題解決力を継続的・系統的に指導するため,研究代表者が提唱する縦糸・横糸モデルに基づく方法を定式化する。第2に、その効果を検証する事例として、教員に当該の指導法を修得させる(つまり、授業・教材設計能力を修得させる)実践を行う。第3に、指導方法の定式化・検証方法として、縦糸・横糸モデルを指導するゲーミング教材用の汎用モジュールを開発するとともに、教師教育専用のゲーミング教材として模擬授業ゲームを開発する。2019年度は、目的1と2に関して、「統計教育」と「教育実践研究」の2つを題材に、より詳細なモデルを定式化し、7回程度の授業に対応したE-learning教材として、当該モデルに基づきモデルの要素を系統的に指導するゲーミング教材の開発を行った。また、統計教材については、大学院の授業で実践を行い、形成的評価を行った。一方、目的3の「汎用モジュール」に関しては、過去に開発してきた情報教育用の教材に組み込むことを想定して、分野・領域・課題内容に依存しないモデルの汎用的な要素として、縦糸・横糸の手順、見方・考え方、領域固有知識を覚えるための5W1Hの知識フレームを系統的に指導する方法を提案した。当該指導法は、ブルームの目標段階と5W1Hの知識フレームとを対応づけたものであり、暗証レベルはWhat、識別レベルはWhy、適用レベルはHowを指導し、分析レベルは複数の知識をWhenに関連づけて指導し、総合レベルはWhereに関連づけて指導する。現在、当該指導法を前述の統計教育と教育実践研究の教材に実装しつつ、改良作業をしている。目的3の「模擬授業ゲーム」については、数学の課題学習の指導法について、単元計画を立てさせ、その単元指導計画とその中で問題解決方法を指導する授業との指導内容の矛盾点をあぶり出すような模擬授業ゲームを開発した。
1: 当初の計画以上に進展している
実績概要に述べた通り、3つの目的のそれぞれについて、2019年度中に研究実践を上げることができた。特に、汎用モジュールの開発が本研究の鍵であるが、統計教材と教育実践研究指導教材という2つの具体的な教材開発と関連づけた帰納的アプローチと、5W1Hの知識フレームやブルームの目標分類という理論と対応づけた演繹的アプローチとの両面から検討したことにより、2年度目の研究方針がほぼ固まり、実践に基づく効果検証の目処が立ったことが大きい。また、教育実践研究用教材では、当該モデルに基づき、教材開発する手法も提案しており、研究成果を普及させる見通しも得られつつある。開発した指導法や教材は、国際会議やブックチャプターとしてアクセプトされており、その意味でも研究成果の妥当性が認められつつあると言える。
2020年度は、統計教材、教育実践研究用教材を改善した上で、教育効果の検証を行う。模擬授業ゲームについては、2019年度に行った形成的評価の結果に基づき、模擬授業体験しても指導計画や課題を変更しようとしない学生にどのように働きかけるのが効果的か、学習者モデルレベルから再検討する。
3月に予定されていた学会の全国大会がオンライン開催に変更となり、旅費の支出がなくなった。2020年度は、国際会議に出張予定だったが、それもオンライン開催になる可能性が高く、旅費の支出は減りそうである。一方で、大学がオンライン授業の実施等のため支出が増えており、運営費交付金からまかなえると思っていた物品費関係を助成金でまかなう必要が高くなると予想される。
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アクティブラーニング研究
巻: 1 ページ: 15-24
Hamada, R., Soranastaporn, S., Kanegae, H., Dumrongroiwatthana, P., Chaisan, S., Rizzi, P. and Dumblekar V., (Eds.) Neo-Simulation and Gaming Toward Active Learning
ページ: 542-553