研究課題/領域番号 |
19K02970
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
野中 陽一 横浜国立大学, 大学院教育学研究科, 教授 (10243362)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 中国における教育の情報化 / 日中比較 |
研究実績の概要 |
中国における「情報化施策」については,「教育信息化十三五規劃(教育情報化第13回5年間計画)」(中国教育部,2016)を中心に資料の分析を進めた.「学校の情報化」については,導入されている情報技術のの動向及び先の資料でも取り上げられているSTEM教育,中でも高度のデジタルツールの活用とものづくりを特徴とするMaker教育の動向について調査した.選択科目ではあるものの多くの学校の「総合実践活動」に盛りこまれており,それに対応する先進的なテクノロジーの導入が進んでいることが明らかとなった.授業におけるICT活用、校務の情報化,e-learningによる教員研修等は,既に定着しており,AIを活用した表情識別システム等の導入も行われている.e-learningに関しては,同期協働遠隔授業の発展型である「双師授業」が塾で先行して行われており,学校等での活用も模索され始めている.中国においては,社会におけるデジタル化,例えば,デジタルマネーの普及と同様に,教育分野へのテクノロジー導入も,日本と比較するまでもなく,圧倒的なスピードで進行している.新型コロナウイルス感染症対策において,日本の多くの学校が遠隔授業に対応できない状況とは大きく異なっている.日中の教育の情報化のプロセスと比較検討する上で,中国において社会全体の情報化が教育の情報化により強く影響していることを踏まえる必要がある.一方,授業レベルでの比較については,調査数が少ないため断定はできないが,テクノロジーの活用頻度は異なるものの,革新的な授業スタイルが生じているとは考えにくい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和元年度末に予定した現地調査が新型コロナウイルス感染症の影響で実施できなくなり,研究協力者を介しての資料収集等が中心となった.また,日本においてGIGAスクルール構想の前倒しや新型コロナウイルス感染症への対応のための遠隔授業への取り組みが始まり,これまでの教育の情報化プロセスとは異なる状況が生まれている.これらの要因が教育の情報化の変容プロセスに影響し始めており,遠隔授業への取り組み等授業の変容のプロセスに影響を及ぼすだけでなく,例えば,教員研修等の対応が現状に追いつかない状況にあるため,オンライン研修やオンラインコンテンツの普及が加速化するなど,教師教育のデザインの在り方にも影響を及ぼしている.これらのことから,授業の変容のプロセス,その変容プロセスのフェイズの設定から見直しを行い,それらに対応した教師教育のデザイン原理を再検討する必要が生じている.
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症の影響で,しばらくの間は現地調査が難しいと考えられるため,中国からの留学生の研究協力者を介して,資料収集,分析を進める.また,新型コロナウイルス感染症が日中の教育の情報化の変容プロセスにどのような影響を与えているのか,両国の教育委員会及び小中高等学校で何が起きているのかを含め,留学生の修了生等にも協力を求めて情報収集を行う.これらの情報を踏まえた上で,教育の情報化モデルの見直しを行いながら、変容プロセスのフェーズ,教師教育の在り方について.再検討する.第3年次に向けて,調査結果を元に東アジア型教育の情報化モデルの検討を進め、変容プロセスのフェイズごとの教師教育のデザイン原理を考察する.
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度末に予定した現地調査が新型コロナウイルス感染症の影響で実施できなくなったため,旅費を執行することができなかった.次年度実施可能であれば現地調査を行い,旅費として執行するが,実施が難しい場合には,研究協力者に資料等の提供を求め,翻訳作業等の費用に充当する予定である.
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