研究課題/領域番号 |
19K02970
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
野中 陽一 横浜国立大学, 大学院教育学研究科, 教授 (10243362)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 教育の情報化 / 日中比較 / 教師教育 / モデル開発 |
研究実績の概要 |
中国における先進的なテクノロジーの教育への導入について,STEM教育,中でも高度のデジタルツールの活用とものづくりを特徴とするMaker教育の動向や拡張現実技術の活用,塾等で実施されている同期協働遠隔授業の発展型でありAIを活用した表情識別システム等も組み込まれている「双師授業」の実施状況等について調査した。東アジア各国における先進的なテクノロジーの教育への導入についても,文献の収集を行なった。 教師教育のデザイン原理に関しては,2014年に公表された中国の「小中高教員情報技術応用能力標準(試行)」と2018年に改定された日本のICT活用指導力との相違やカリキュラムとの関連,e-learningによる教員研修への反映のされ方等について検討した。 新型コロナウイルス感染症対策において,日本の多くの学校が遠隔授業に対応できない状況にあるが,GIGAスクール構想によってICT環境の整備が進み,日本の教育の情報化プロセスに大きな影響を及ぼすと考えられる。しかしながら,まだ,導入直後であることから,一人1台の端末や学習者用デジタル教科書等の活用よる影響を把握するには至っていない。 授業レベルでの比較については,新型コロナウイルス感染症によって,現地調査が実施できなかった。 日中の教育の情報化のプロセスを比較検討する上で,教員が情報テクノロジーを受け入れる態度等に加え,社会全体の情報化が教育の情報化により強く影響していることを踏まえる必要がある。家庭でのICT活用状況や保護者の意識,オンライン授業の実施状況等についても情報収集を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響で現地調査が実施できなくなり,研究協力者を介しての資料収集等が中心となった。また,日本においてGIGAスクルール構想の前倒しや新型コロナウイルス感染症への対応のためのオンライン授業への取り組みが始まり,これまでの教育の情報化プロセスとは異なる状況が生まれている。これらの要因が教育の情報化の変容プロセスに影響し始めており,オンライン授業への取り組み等授業の変容のプロセスに影響を及ぼすだけでなく,教員研修等においても,オンライン研修やオンラインコンテンツの普及が加速化するなど,教師教育のデザインの在り方にも影響を及ぼしている。 これらのことから,授業の変容のプロセス,その変容プロセスのフェーズの設定から見直しを行い,それらに対応した教師教育のデザイン原理を再検討する必要が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症の影響で,現地調査が難しいと考えられるため,博士課程を修了した中国からの留学生の研究協力者を雇用し,資料収集,分析を進める.また,新型コロナウイルス感染症が日中の教育の情報化の変容プロセスにどのような影響を与えているのか,両国の教育委員会及び小中高等学校で何が起きているのかを含め,留学生の修了生等にも協力を求めて情報収集を行う. これらの情報を踏まえた上で,教育の情報化モデルの見直しを行いながら、変容プロセスのフェーズ,教師教育の在り方について再検討する. なお,東アジアの国々において新型コロナウイルス感染症の状況及びその影響は異なっており,東アジアの共通点を抽出することが難しいことが予想される。その場合は,調査結果を元に教育の情報化モデルの日中比較を行い,変容プロセスのフェーズごとの教師教育のデザイン原理と合わせて考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で,現地調査が実施できず,海外旅費が執行できなかった。次年度も現地調査の実施は難しいと考えられるため,中国からの留学生(博士取得済)の研究協力者を雇用して調査研究を行う予定である。
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