研究課題/領域番号 |
19K02977
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
坂本 毅啓 北九州市立大学, 基盤教育センター, 准教授 (30353048)
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研究分担者 |
中原 大介 福山平成大学, 福祉健康学部, 教授 (20461999)
佐藤 貴之 北九州市立大学, 基盤教育センター, 教授 (90310979)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 福祉教育 / 教育工学 / オンライン授業 |
研究実績の概要 |
本研究は、福祉職・保育職の養成教育の現場実習でeポートフォリオを中心とした教育プログラムを開発し、その実習指導方法を構築する研究である。 その1年にあたる2019(令和元)年度の計画では、3つの課題について明らかにすることを目指した。1つ目は、実習現場においてeポートフォリオを導入すべき課題の明確化、2つ目は、我々がこれまでの実習教育において連携してきた福祉事業所及び保育所に対してアンケートを実施し、eポートフォリオを導入するにあたっての解決すべき課題の明確化、3つ目は実習現場におけるICT活用に対する心理的抵抗及び対人援助という現場特性を踏まえて、どのような課題を乗り越えなければICT活用に至ることが出来ないのかを明らかにする、以上の3点である。 上記の内、連携している福祉事業所及び保育所に対するアンケートを行うための前段階として、福祉職・保育職を目指す学生(実習生)に対するアンケートを実施した。その結果、学生としては便利であることを認めつつも、心理的抵抗や学習効果への疑問がかなりあることが分かった。また、ICTを活用した場合の情報漏洩への危機感をもっていることも分かった。この結果を踏まえて福祉事業所及び保育所に対するアンケートを行う予定であったが、アンケート作成が難航して実施スケジュールが2020年2月以降へずれてしまい、そこへ新型コロナ感染症拡大を受けて福祉事業所及び保育所に対してアンケートを実施することが困難となった。その結果、学習者における3つの課題点について分析可能なデータを入手することが出来たが、指導者(教育者)における課題点については分析可能なデータを入手することが出来なかった。 上記理由により、1年目での研究成果について研究発表(口頭発表、論文)をするにまで至ることが出来なかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究として進んだ点は、相談援助実習を実際に行った学生と社会福祉士養成通信課程で学んでいる学生(福祉専門職経験者と未経験者)に対して、実習記録についてICTを活用することについてアンケート調査を行うことができた点を挙げることができる。このアンケート結果については集計を行うとともに、自由記述欄のテキストを質的分析を行うことができた。保育実習についても、実習に参加した学生へのヒアリングを行うことができており、システムを考える上で必要な、学生のニーズを分析する基礎となるデータの収集は充分にできたと言える。 そのような中で研究が「やや遅れている」と判断したのは、当初予定していた実習指導者及び実習担当教員へのアンケートを実施することができなかったことと、学生へのアンケートを分析した結果について学会等で発表することができなかったことから、「やや遅れている」と判断をした。 この研究の進捗が「やや遅れている」こととなった理由としては、次の2つある。まず、勤務校業務量が当初想定していたよりも多くなったために、当初予定していた教育者への調査の準備を進めることができなかったことがまず挙げられる。もう1つは3月と5月に予定していた学会発表が、新型コロナウィルス感染対策(以下、「COVID-19対策」)からできなくなったことためによる。また、COVID-19対策の影響は実習現場における研究協力についても出ており、年度末である2020年3月に実習現場での実習を行うことが難しくなった要因の1つでもある。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間の2年目となる今年度の研究の推進については、①学生アンケートの結果の分析結果を学会発表することで議論を深め、学生が必要としていることを明らかにする、②教育者(実習指導者、実習担当教員)へアンケートを行い分析を行う、③教育者へのアンケート結果の分析結果を学会発表することで議論を深め、教育者が必要としていることを明らかにする、④「①」と「③」の結果を踏まえ、実習指導を行うことが可能となるようなeポートフォリオのシステムを検討する、ということに取り組む。これらを通して研究期間の3年目にはシステムを開発、導入、試行を通して形成的評価を実施することを目指す。そうすることで4年目には改良されたシステム本格的に導入することが可能となると考えられる。 ただし、福祉現場や保育現場におけるCOVID-19対策の影響が不確定要素としてある。いずれも社会的必要性からサービス提供は継続されるが、COVID-19対策から調査へ協力するだけの余裕が2020年4月時点では厳しいように考えられる。COVID-19の感染状況次第であるが、場合によっては調査の実施に困難が伴うことも考えられる。その場合は、少数でも良いのでメールやテレビ会議システムなどの活用も視野に入れながら、実習指導者や実習担当教員へのヒアリングを行うことも検討したい。 同じくCOVID-19対策の影響を受けると考えられる研究成果の発表については、学会発表についてはオンライン開催(Webinar)での発表も視野に入れつつ、場合によっては大学紀要やその他の雑誌等の媒体での研究ノートや教育実践報告も行うことも検討するなど、何らかの形で研究成果の発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 2019(令和元)年度に行われる予定だった学会のうち、特に2020年3月に行われる予定だった学会研究会及び学会全国大会への参加が出来なかったため、その分の旅費が執行されなかった。テスト用機材のなどの購入は準備進めているが、福祉事業所及び保育所へのアンケートを実施することが出来なかったために、関係する予算が執行されなかった。また論文による研究発表をすることが出来なかったため、論文掲載料の執行もなされなかった。 (使用計画) 2020(令和2)年度も学会研究会及び学会全国大会への参加が難しいと考えられる。共同研究者による研究会開催については、オンラインでの実施を予定している。共同研究は進め、福祉・保育関係の雑誌への投稿を行うことに伴う予算執行などがあると考えられる。また1年目に実施できなかった福祉事業所及び保育所へのアンケートについて、実施をする予定であるため、これに関連した予算の執行が計画されている。さらに、eポートフォリオを活用したソフトウェアの開発も予定されているため、その開発経費の執行も計画されている。
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