研究課題/領域番号 |
19K02982
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研究機関 | 東京情報大学 |
研究代表者 |
河野 義広 東京情報大学, 総合情報学部, 助教 (70599456)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 学修支援システム / 学修データ収集システム / 子どもの発達段階 / プログラミング教育 / 地域活動 |
研究実績の概要 |
2019年度の研究実績は、1) 子どもの発達段階に応じた学修活動の収集方法の決定、2) 学修データ収集システムの設計・開発、3) 各種活動での学修データ収集の3点である。 1)について、対象とする子どもの発達段階に合わせ内容の深さや聞き方を調整するため、文部科学省の「子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題」をもとに、小学校低学年と高学年、中学校以上の3段階に分けて、アンケートの収集項目および質問の表記を検討した。本調査に関して、子ども達が被験者となることから、本学倫理審査委員会に対して「人を対象とする実験・調査等に関する研究計画書」を提出し、承認を得て研究を進めている。 2)について、1)で検討した発達段階やアンケート収集項目をもとに、子どもの発達段階と学修課題に連動した学修データ収集システムを開発した。具体的には、子どもの発達段階に応じて質問の内容や聞き方の深さが異なること、学修活動の種別に応じて到達目標が異なることから、それらに対応する質問文と選択肢の文言を記録するデータベース、それらを学修データ収集システムから参照するためのWeb APIを開発した。なお、アンケート選択肢の内容や表記が異なっていても、同じ意味の選択肢は、同一の回答として識別・分析できるよう設計した。 3)について、子どもの主体的な学修課題の選択を促進するため、「プログラミング的思考」「ICTリテラシー」「社会的な見方や考え方」に基づく活動を推進した。2019年6月よりプログラミング教室でアンケート収集を開始し、同年7月と11月に開催されたIT大学、同年7月と9月に開催されたこどものまちでも同様にアンケートを収集した。開発した学修データ収集システムとプログラミング教室での学修記録の分析結果をもとに、2020年3月開催の教育システム情報学会 2019年度第6回研究会にて、研究発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度において、必須の目標として掲げた学修データ収集システムの開発はほぼ達成できた。学修活動のデータ収集に際して、子どもの発達段階に関する文献を調査し、アンケート項目を設計した上で、本学倫理審査委員会の審査を経て調査研究を開始した。 学修活動時に子ども達へのフィードバックを実現する学修課題推薦システム自体は未完成ではあるものの、2020年度夏頃の地域活動時までに、基本的な機械学習を用いてシステムを開発する予定である。また、プログラミング教室では、2019年6月より継続的に学修データを収集できており、プログラミング教育実践における学修効果の分析を進めている。 以上のことより、研究準備からシステム開発、学修データ収集に至るまでの基礎ができていることから、本研究は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、1) 学修データ収集システムの改修、2) 学修課題推薦システムの開発、3) プログラミング教室、地域活動における学修へのフィードバック、4) 学修成果物共有基盤の基本設計、以上の4点で研究を進める。 1) 2)について、2019年度に開発したシステムをベースに、学修活動時のデータ収集およびフィードバックを行うシステムを開発する。2019年度末に学修時のアンケート項目を精査し、目標設定を問う設問を追加したことで、DBやAPI、アンケートシステムの改修が必要となった。 3)について、2020年度は新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から対面での活動が困難となった。プログラミング教室は、多少の規模縮小はあるものの、4月下旬よりオンライン開催に移行できている。一方、地域活動であるIT大学およびこどものまちは、オンラインで実施できる範囲での活動を検討中である。特に子ども達の保護者にオンラインでの対応を依頼することから、モバイル機器のみで対応できる内容かつ、本研究で示した能力要素に関係する学修内容として検討を進める。 4)について、学修成果物共有基盤とは、子ども達の学修活動を通じて創出された成果物をWeb上で共有する仕組みである。具体的には、子ども達が作り上げたゲームやアプリ、映像コンテンツなどの学修成果物の作成意図や過程、展望などを簡易な入力インタフェースを用いたブログ形式で発信する仕組みを検討している。2020年度にシステム要件を洗い出し、基本設計を行うとともにプロトタイプ開発を進める予定である。また、2021年度に外部のソフトウェア企業にシステム開発を委託することから、2020年度の設計段階から協働で議論を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では、子ども達から収集した学修活動データから志向を分析するため、大規模データの機械学習を行うワークステーションを購入予定であった。しかしながら、2019年度は学修データ収集システムの開発および学修活動データの収集に注力したことから、ワークステーションの購入は一時見送りとした。加えて、本学において、データ科学の研究拠点として、先端データ科学研究センターの設立準備が進められており、すべての教員が機械学習を用いた実験・解析ができる高性能ワークステーション(特に深層学習が効率的に実行できる環境)が整備される予定であることから、現時点ではワークステーションの購入は必要ないと判断した。 その分の予算を用いて、2021年度のシステム開発委託費を充実させるとともに、2020年度に予定している学修成果物共有基盤のプロトタイプ開発におけるクラウド開発環境の準備費用として計上する予定である。
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