研究課題/領域番号 |
19K02982
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研究機関 | 東京情報大学 |
研究代表者 |
河野 義広 東京情報大学, 総合情報学部, 助教 (70599456)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 学修支援システム / フィードバックシステム / 子どもの主体的な学び / リフレクション支援 / ゲーミフィケーション / コロナ禍での地域活動 / アウトプット / 学修成果物共有基盤 |
研究実績の概要 |
2021年度の研究実績は、1) コロナ禍におけるオンラインと対面の参加者が連携する子ども向け地域活動「ウォークアドベンチャー」の実践、2) ウォークアドベンチャー用フィードバックシステムの開発と評価、3) 学修成果物共有基盤のプロトタイプ開発の3点である。 1) 2)について、2020年度からコロナ禍に配慮し、オンラインと対面の参加者が連携して社会的距離を確保しながら活動する地域活動「ウォークアドベンチャー」を企画・運営している。本活動は、ウォークラリーの要領で地域のスポットを巡りながらクリアタイムを競うもので、ウォークアドベンチャー用フィードバックシステムと併用しながら主体的な学びを促す地域活動を実践した。本フィードバックシステムでは、収集した活動データを機械学習により分類し、その結果をゲーミフィケーションの観点でゲーマー分類手法のバートルテストによる分類結果と紐付けたリフレクション支援を実現した。ウォークアドベンチャーでの被験者実験により、参加者の志向に適応したリフレクション支援が次の主体的な行動に好影響を与えるかを調査した結果、リフレクション回数の増加に伴い主体的な行動が増加した。システム設計と実装について2021年9月開催の国際会議Network-Based Information Systems (NBiS-2021)にて発表、10月にウォークアドベンチャーの開催、2022年3月開催の教育システム情報学会にて実験の分析結果を発表した。 3)について、研究協力者とともに学修成果物共有基盤のシステム要件や開発方法を検討し、クラウド開発環境によるシステムのプロトタイプ開発を行った。本基盤システムでは、子ども達の学びの成果(アウトプット)を動画・画像形式で共有し、メンター(外部の観察者)からのフィードバックを得ることにより、アウトプット主体の学びの可能性や課題を探る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究3年目の2021年度は、コロナ禍で地域活動が制限されたため、2020年度の地域活動で収集した学修データをもとに、参加者のクラスタを分類するモデルを作成した。そのモデルを用いてウォークアドベンチャー用フィードバックシステムを開発し、2021年度の地域活動で被験者実験を実施した。2020年度の課題であった収集データの前処理とクラスタリングの一部手作業については、データ変換用のプログラム作成により改善された。また、学修成果物共有基盤については、研究協力者と相談しながら基本設計をまとめ、Amazon Web Services (AWS)を用いたシステムのプロトタイプを開発した。ただし、機能の詳細については未完成の部分があるため、引き続き開発を進める必要がある。 以上より、ウォークアドベンチャー用フィードバックシステムの開発と評価は達成できたものの、その他の活動に対応したフィードバックシステムが十分に検討できていないこと、学修成果物共有基盤のシステム開発が未完了であることから、本研究の進捗はやや遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、1) プログラミング教室用フィードバックシステム、2) こどものまち用フィードバックシステム、3) 学修成果物共有基盤、それぞれの開発と評価について研究を進める。プログラミング教室および地域活動の1つである「こどものまち」に適応したリフレクション支援を検討し、専用のフィードバックシステムを開発する。学修活動の種別によって必要な能力要素や学びの内容自体が異なるため、適切なリフレクション支援を実現するためには、これまでに収集した学修データの分析が必要となる。 1)について、プログラミング教室では、楽しかったことやできたことなどの多肢選択法による回答に加え、目標や講師による振り返りメモなどの記述式の回答を記録している。回答した選択肢間の相関係数の算出、記述式回答の形態素解析に基づく単語の重要度算出や共起分析をもとにフィードバックシステムの要件を検討し開発する。 2)について、こどものまちでは、コロナ禍以前に収集した学修データを用いて参加者をクラスタリングした上で、ウォークアドベンチャーと同様に、ゲーミフィケーションの観点で適切なリフレクション支援を実現するフィードバックシステムを開発する。 3)について、2021年度に開発したプロトタイプをもとに、成果物共有基盤の開発を完了し、プログラミング教室や地域活動で実際に運用して子ども達の成果物(アウトプット)の蓄積を推進する。加えて、アウトプットの質的評価の検討、および子ども達の能力開発を評価するルーブリックの策定により、成果物共有基盤によるアウトプット主体の学びの可能性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、コロナ禍の影響で学会出張がなく、旅費交通費は発生しなかった。システム開発委託費は、研究協力者と相談しながら設計を進め予定通りに執行できた。AWSのクラウド開発環境の利用料を見込んで予算を確保していたが、開発途中で利用サービスの見直しを行い、必要最小限の利用料に留めることができた。 2022年度は、研究協力者に対する技術相談料の他、システムの保守に必要な費用、クラウド環境利用料を計上している。
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