研究課題/領域番号 |
19K02985
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研究機関 | 新潟青陵大学 |
研究代表者 |
南雲 秀雄 新潟青陵大学, 福祉心理学部, 教授 (90300087)
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研究分担者 |
武村 泰宏 大阪芸術大学, 芸術学部, 教授 (90280065)
大森 康正 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (80233279)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | プログラミング教育 / 小学生 / プログラミング的思考 / コーディングカード / 評価基準 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,「人的条件が整っていない場合でも,専門性が高く経験豊かな教授者が実施する人力集約的なプログラミング教育と同等の学習効果をもたらすプログラミング教材の研究開発」である。この目的達成のために,新潟県内の教育センター指導主事の先生および小学校校長先生から意見聴取を行い,(1)スモールステップ学習,(2)協働型の学習スタイル,(3)モチベーションの維持が必要であることの確認をいただいた。 このような教材を開発するために,アーテックロボ2.0 アドバンスキット16セットを購入し,それを使った上記(1)~(3)を満たす次のコーディングカードを作成した:サーボモーターゲート開閉カード,センサーとサーボモーターカード,LED点灯カード,LEDとブザーカード,ロボットカーカード。 これらの教材を使用して,小学生対象のプログラミング体験教室を3回,小・中・高等学校の教員対象のプログラミング講習会を5回実施した。これらの体験教室および講習会においては,2人1組のグループ学習,講師はプログラミングの指導は行わない,各ステップで早く終わったグループは終わっていないグループを助ける,という教授法を採用した。その結果,小学5・6年生において教師の指導が無くてもプログラミングの作業が進められることが確認できた。 これらの教材の評価を定量的に行うための「プログラミング的思考」の評価ツールversion5を開発し,小学校でのプログラミング体験教室において試行した。その結果評価ツールの学年による難易度の調整が必要であることが確認された。 本研究の成果は,IEEE Frontiers in Education Conference(2019/10/16-19, Cincinnati, USA),(一社)日本産業技術教育学会の全国大会および北陸支部大会,情報処理学会CE研究発表会にて発表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年5月から6月に掛けて,教員対象のプログラミング講習会も含め,教員の皆様及び指導主事の先生からのご意見を聴取することができ,教材開発および評価基準開発の方向性がほぼ固まった。それを受けて,プログラミングのための機材およびプログラミング環境の選定を行い,7月から8月に掛けてアーテックロボ2.0アドバンストキット16セットを購入した。このキットおよびScratch3.0を対象に小学生向けのプログラミング教育学習指導案を作成。さらにそれに基づきコーディングカードを作成した。 小学校でのプログラミング体験教室は,7月に新潟県内小学校において午前中の2コマを使って実施。6年生24人が参加。9月に別の小学校において,午前中の1コマを使って5年生40人に実施。続いて1コマを使って6年生43人に実施した。小・中・高等学校教員に対するプログラミング講習会は,8月から12月にかけて5回実施した。参加者人数は,1回目41人,2回目30人,3回目9人,4回目20人,5回目12人となった。 教材を定量的に評価するための評価基準については,小学校の教員から指摘を受けた「問題を配布する教員による解答への影響がなくなるように説明動画を制作する」という課題が残っていたため説明動画を制作して,評価の過程で使用した。ただ,評価基準については学年に合わせた難易度の調整という課題が見つかり,未だ完成には至っていない。 本研究に関する学会発表は,2019年8月24日・25日の(一社)日本産業技術教育学会第62回全国大会(静岡)にて2件,10月18日にIEEE Frontiers in Education Conference(Cincinnati, USA)にて1件,(一社)日本産業技術教育学会第30回北陸支部大会で1件,情報処理学会コンピュータと教育研究会153回研究発表会にて1件行っている。
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今後の研究の推進方策 |
現在発生している新型コロナウイルス感染症が本研究の今後の進展に影響を及ぼすことは避けがたく,実現をめざす教授者に依存しない小学校プログラミング教育は,ポスト・コロナを見据えたものでなければならなくなった。このためコーディングカードの電子化およびコーディングカードから説明動画への関連付け,評価基準の電子化など,オンラインでの教育を想定した教材および評価基準の開発を行っていく。 2020年度には2019年度に完成したプログラミング的思考の評価基準に基づいて,教材を改善していき,教材を完成させる予定であったが,評価基準に難易度の調整という課題が残ったため,2020年度前半は,教材の改善と評価基準の改善を同時に進めることとする。この期間には,学年に合わせた教材の難易度と,評価基準の難易度の両方を調整していく。 2019年度は,新学習指導要領開始前の移行期間でのプログラミング体験教室という形態で小学生に対するプログラミング教育を実施したが,2020年度は,より定期的に実施される,放課後及び週末のプログラミング教室,およびクラブ活動において開発する教材の試行を行っていく。このために地域の小学校教員および教育委員会との良い関係を築き,地元の理解を得た上で研究活動を進めていく。 2019年度は,様々な課題に対応できる汎用性のある機材であるアーテックロボ2.0を使用して教材製作を行った。2020年度は,小学校での新学習指導要領使用開始年度にあたるため,小学校の各教科で使いやすい教材の開発を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月14日,15日に高知大学にて開催予定であった(一社)日本産業技術教育学会第35回情報分科会が新型コロナウイルス感染症の影響で中止になり,そのために残しておいた旅費が次年度に繰り越されることになった。 この次年度使用額については,新型コロナウイルス感染症の影響で新たに生じる経費に充てる予定である。具体的には,コーディングカードの電子化およびコーディングカードから説明動画への関連付け,評価基準の電子化など,オンラインでの教育を想定した教材および評価基準の開発に必要なサーバのレンタル料金,ソフトウェア代である。
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