研究課題/領域番号 |
19K03001
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
福安 直樹 和歌山大学, システム工学部, 准教授 (60324993)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | プログラミング教育 / BYOD / プログラミング演習環境 / セルフビルド |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,BYODを利用した情報処理教育における演習環境の在り方を考察し,新たな指導支援環境を提案することである.学習者が使用する演習環境(PC上のアプリケーションなど)の設定が必要であるが,情報センターなどの組織が管理するデスクトップPCを並べた情報系演習室とは異なり,BYODでは学習者自身が設定する必要がある.学習環境の構築は,情報処理教育において本質ではない場合も多く,学習者自身で容易に準備できるようにすることが重要である. 研究2年目は,複数の授業にまたがって漸増的に演習環境を構築できるようにすることを目的として,前年度に実施したプログラミング演習授業において本研究で構築した演習環境を使用した学生のうち,本年度にソフトウェア工学系の演習授業を受講した学生を対象に,版管理などの演習に必要な機能を新たに追加した環境を差分という形で配布し,それを用いた授業を実施した.受講生は,前年度に使用した環境を上書きする形で機能を追加できるため,それまで使用していた環境からシームレスに新たな環境に移行することができた. また,前年度に使用した演習環境について改善を施したうえで,Java言語によるプログラミング演習の授業を実施した.この授業においても,Javaコンパイラのみの環境をベースに,IDEを差分として追加するようにし,授業に内容に合わせて受講生自身で更新できるようにした. また,演習における活動状況の把握支援として,テスト自動生成技術を活用した手法を検討し,情報処理学会ソフトウェア工学研究会において報告した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国公私立大学においてプログラミングの演習授業を担当している教員16名に対するアンケート調査の結果,半数以上の教員がBYODで実施していると回答した他,初回の授業で受講者の環境を統一したり,オンラインのIDEを利用するなど,演習環境の構築に苦労している様子が伺えた. それに基づき,BYODで利用可能な,Java言語とC言語の演習環境をそれぞれ構築し,実際の演習授業において使用した.情報系の学部2年次生を対象としたプログラミングの演習授業では,IDEを含むJavaの開発環境をzip圧縮により配布した.学部1年次生を対象としたプログラミングの導入教育では,C言語のコンパイラとそれを実行できるように設定したコマンドラインをzip圧縮により配布した.また,複数の授業にまたがった漸増的な演習環境の構築として,前年度に本環境を使用した学生を対象に,演習に必要な版管理を行うためのGitリポジトリのクライアントなどの機能を追加した環境を差分という形で配布し,ソフトウェア工学系の演習授業を実施した.令和2年度は,大半の授業がオンラインで実施されたため,各自のPC上の環境は受講生自身で管理することが必須であったが,本環境を導入していたことにより,スムーズに実施することができた. また,演習における活動状況の把握支援として,テスト自動生成技術を活用した手法について検討を行い,情報処理学会ソフトウェア工学研究会において,「テスト自動生成を用いたプログラム機能差の検出 -プログラミング教育における自動評価を目的として-」のタイトルで報告を行った. 一方で,感染症の拡大に伴い,他の演習環境との比較や,本環境の評価が十分には実施できていない.特に,大半の授業がオンラインで実施されたため,本環境の問題などの把握は学生からの申告に基づいており,受講生の状況を直接観察できていないことが今後の課題である.
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今後の研究の推進方策 |
本環境の評価が次の課題である.感染症の拡大に伴い,他の演習環境との比較や,本環境の評価がこれまで十分には実施できていない.特に,大半の授業がオンラインで実施されたため,本環境の問題などの把握は学生からの申告に基づいており,受講生の状況を直接観察できていないが,今後も直接観察は難しいと考えられるため,本人の申告のみに基づかない評価の方法について検討し実施する. また,演習授業においては,受講者の状況を把握しながら進行管理が行われる.先のアンケートにおいても,各教員がさまざまな工夫を試みているという結果が得られているが,特に対面での授業の実施が困難な状況においては,これまでとは異なる工夫が必要である.そこで,遠隔の状況下においてBYODを活用して受講者の活動状況を把握する仕組みについて検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
感染症拡大に伴って,学会等がオンライン開催になっていることや,他大学の視察を控えたことにより,当初計画していた出張が減少した. また,研究協力者の協力のもとに演習環境の動作確認を実施する予定であったが,学生の登校が制限される中で研究協力者の確保が難しく,雇用することができなかった. 今後は感染症の状況次第ではあるが,研究協力者を雇用しての環境の動作確認と改善に使用する予定である.
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