研究課題/領域番号 |
19K03015
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研究機関 | 北陸大学 |
研究代表者 |
鈴木 大助 北陸大学, 経済経営学部, 准教授 (30385538)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ペネトレーションテスト / 脆弱性評価 / サーバ構築 / パケットキャプチャ / クラウド / Amazon Web Services |
研究実績の概要 |
本研究の目的は一般情報教育のネットワーク・セキュリティ分野について,能動的学習を促す効果的な演習カリキュラムを開発することである.研究代表者が専門情報教育のために開発している演習カリキュラムを基に,一般情報教育において効果的な実施が可能となるよう必要な改訂・修正を行いながら,開発・実践を進めている. 本年度は以下の3つの成果を公表した. 「脆弱性評価と修復プロセスを取り入れたサーバ構築演習」について,セキュリティサマーサミット(高知工科大学,2019年7月24日)で報告を行った.演習は,受講生自身がWebサーバ構築から脆弱性評価と修復まで行うもので,専門教育の一環として実施した.事後自己評価とアンケートから,本演習は受講生の興味が攻撃手法に偏るのを抑えながら,セキュリティに対する興味を喚起しうることが示唆された. 「TCP/IPネットワークの理解を促進する無線パケットキャプチャ演習の開発と実践」について,情報教育シンポジウム(大阪電気通信大学,2019年8月19日)で報告を行った.演習は,受講生各自のノートPCを用いてWebサーバとの通信パケットをキャプチャし分析するもので,専門教育の一環として実施した.事前事後テストの結果,ある程度理解の向上は見られたが,受講生が自律的に学習を進めるためにはまだ改訂が必要であることも確認された. 「一般情報教育におけるAmazon Web Servicesを利用したサーバ構築演習」について,情報処理学会コンピュータと教育研究会(大阪教育大学,2020年2月16日)で報告を行った.演習はクラウド上にWebサーバを構築するもので,一年生を対象に実践を行った.受講生の65%はWeb サーバの稼働まで完了し,さらに受講生の15%はコンテンツ管理システムをインストールしてブログの立ち上げまで完了した.アンケートからは,7割の受講生が新たな発見や驚きを感じていること,約半数がテーマに興味を持ったことが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一般情報教育における演習実践に向けて,カリキュラム開発と実践準備はおおむね順調に進んでおり,一部演習は実践に移行している.ネットワーク学習のためのパケットキャプチャ演習は当初予定より前倒しで1年生の授業で実践し効果測定を行っている.また,セキュリティ学習のためのサイバー攻撃演習の実践は2021年度からの予定であるが,その実践に向けて,クラウドサービスを利用したサーバ構築演習を1年生の授業で行うなど,ほぼ順調にカリキュラム開発と実践準備は進んでいる. ただし,学生が密になるようなグループワークを避けるべきである現状を鑑みると,当初予定にあったロールプレイ演習の実施は困難であり,遠隔授業であっても能動的学習を促す効果的な演習カリキュラムの開発に移行する必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染拡大防止のため,研究代表者の所属大学では2020年6月2日まで一切の教室授業を行わず,遠隔授業を実施している.6月3日以降段階的に教室授業を再開する予定ではあるが,グループで集合して行う演習の実施は依然避けるべきである.この観点から,本研究計画のうちロールプレイ演習については実施を見送り,遠隔授業であっても能動的学習を促す効果的な演習カリキュラムの開発に移行する. パケットキャプチャ演習については,専門教育での実践をふまえて改良ののち,1年生を対象に実施したが,高い教育効果を得るには至っていない.大量に取得されるパケットをフィルタリングして分析するプロセスは一般情報教育として行う演習の一部としては若干高度に過ぎたと思われる.パケットキャプチャを1年生の演習として行うことは無理ではないものの,効果を得るには相当の学習時間の確保が必要と考えられ,時間対効果に優れていないと現時点では判断している. しかし,その前段階として行ったコマンドを利用したネットワーク経路調査演習は高い教育効果につながる可能性が見られた.そこで,今後はまず,コマンドを利用したネットワーク経路調査演習を柱に据えたカリキュラムの開発を行う. また,クラウドを利用したサーバ構築演習に関して,計画段階では1年生には高度に過ぎるのではないかと若干懸念があったが,先行実施の結果,1年生でも十分に実施可能であり,しかも多くの受講生の興味を喚起することが確認された.これをふまえ,クラウドを利用したサーバ構築演習を取り入れたネットワーク・セキュリティ学習のカリキュラムを開発する.これにより,遠隔授業であっても能動的学習を促す効果的な演習カリキュラムを実現できると期待される.
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度当初予定では学会出張を4回計画していたが、コロナ禍により2020年3月に予定していた学会出張1回が取りやめとなった。2020年度は2019年度に実施できなかった分の学会出張を実施する。次年度使用額はその旅費の一部に充当する。
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