研究課題/領域番号 |
19K03015
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研究機関 | 北陸大学 |
研究代表者 |
鈴木 大助 北陸大学, 経済経営学部, 教授 (30385538)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 情報セキュリティ / 事例学習 / 個人情報保護 / 公開鍵認証 / eKYC / インターネット投票 / フィッシング / 口座売買 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は一般情報教育のネットワーク・セキュリティ分野について,能動的学習を促す効果的な演習カリキュラムを開発することである.本年度は以下の成果を公表した. 「データ利活用と個人情報保護に関する事例学習を取り入れた情報通信ネットワークの授業実践の試み」では,インターネットユーザの行動追跡に関する事例学習を開発し,実験授業を通じてその教育効果を検証した.当該学習がネットワーク技術に対する理解の必要性を感じさせる効果をもたらし,インターネットを通じて収集される個人データの利活用について自分事として考える契機になることが示唆された.さらに,当該事例学習をジグソー法によって行い,「データ利活用と個人情報保護に関するジグソー法を用いた事例学習」として発表した. 「公開鍵認証に関する事例学習を取り入れた情報セキュリティの授業実践の試み」では,実社会における公開鍵認証に関する事例学習を取り入れた授業設計と授業評価設計を行った.さらに,「情報セキュリティ教育における公開鍵認証に関する事例学習の実践と評価」では,当該事例学習を実験授業で実践し,その教育効果を検証した.社会事例を挙げて自分の意見を述べる観点で受講生の自己評価が向上した他,事前事後に実施した理解度確認テストにおいて,統計的有意な得点の向上が見られた. 「フィッシング対策教育における事例学習がセキュリティ意識の変化に及ぼす効果」では,フィッシングの組織的な犯罪に関する報道に基づくレポート課題を授業に取り入れて,その教育効果を検証した.到達目標に関する自己評価と事例学習に関する評価を行ったところ,設定した多様な観点で受講生の理解の自己評価が向上したほか,フィッシング攻撃に対する警戒感の高まりやセキュリティ意識の向上が伺える自由記述が確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の影響を受けたオンライン授業への変更等の対応に伴い,本研究課題も方向性を一部変更して実施している.オンライン授業でも能動的学習を可能とする演習カリキュラムを設計・実践し,検証・改善を重ねてきた. ネットワークの学習に関して,学生が密になるようなグループワークを避けるべきであった状況を経て,本計画のうちロールプレイ演習は実施を取り止めた.遠隔でも各自で取り組む事ができるパケットキャプチャ演習は専門教育では有効であるが,一般教育で効果を得るには相当の学習時間の確保が必要であり適さないと判断し,コマンドを用いた経路調査実験に移行した.さらに,初学者にも取り組みやすい演習として事例ベース学習教材を開発し,経路調査実験との間で教育効果の比較検討を行った. セキュリティの学習に関して,サイバー攻撃演習の教材を開発し,実験授業を通じて,専門教育においては高い教育効果が得られることを確認・報告済みである.一方で,サイバー攻撃演習は実践難易度が高く一般教育には適さない.そこで,一般教育でも実践容易な演習として,各種ケーススタディ演習を開発し,実践を通じてその効果検証を行い,報告を行った. コロナ禍の影響で研究方針を変更し,コロナ禍が一定の収束を迎えた後は,進捗の遅れを取り戻すべく,滞っていた報告を行ってきた.2023年度は,セキュリティに関する事例ベース学習教材の開発・実践を中心に行い,5件の論文発表・学会報告を実施することができた.しかし,全体としては進捗の遅れを完全に取り戻すには至っていない.
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者の所属する学部では,新型コロナウイルス感染拡大防止を契機に教育のDXが進み,情報系の一部科目について各種オンラインツールを活用した遠隔授業を実施している.本研究では,教室で行うロールプレイ演習については実施を取り止め,遠隔授業であっても能動的学習を促す効果的な演習カリキュラムの開発に移行している. ネットワークの学習法については,初学者が取り組みやすい演習としては経路調査実験と事例ベース学習を開発し,比較検討を行った.いずれの方法も情報通信ネットワークに対する興味と理解を促進する高い効果が確認されたが,事例ベース学習はより実践難易度が低く,より教育効果が高い可能性が示唆された. セキュリティの学習に関して,サイバー攻撃演習の教材を開発し,実験授業を通じて,専門教育においては高い教育効果が得られることを確認・報告済みである.一方で,サイバー攻撃演習は実践難易度が高く一般教育には適さない.そこで,一般教育でも実践容易な演習として,各種ケーススタディ演習を開発し,実践を通じてその効果検証を行い,報告を行った. 次年度は,ネットワーク・セキュリティ教育の現状と関連する研究を改めて調査し,これまでの本研究を総括した上で関連研究との関係を明確化し,将来の課題を提示するべく報告を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度から2021年度までは新型コロナウイルス感染拡大防止のため,学会・研究会はオンライン開催がメインとなった.学会・研究会に参加・報告はしたものの,旅費は使用しなかった.また,研究代表者自身オンライン授業の対応に追われて,本研究に関する成果報告の機会が減少していた. 2022年度からオンサイトでの学会・研究会も徐々に増えてきたため,進捗の遅れを取り戻すべく,滞っていた報告を行ってきた.2023年度は,セキュリティに関する事例ベース学習教材の開発・実践を中心に行い,5件の論文発表・学会報告を実施することができたが,進捗の遅れを完全に取り戻すには至っていない.次年度は,これまでの研究を総括して,将来の課題を提示するべく,報告を行う.次年度使用額はその参加費・旅費の一部に充てる.
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