研究課題/領域番号 |
19K03019
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研究機関 | 森ノ宮医療大学 |
研究代表者 |
仲村 正子 森ノ宮医療大学, 保健医療学部, 助手 (50824439)
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研究分担者 |
鍋田 智之 森ノ宮医療大学, 保健医療学部, 教授 (00597817)
辻 涼太 森ノ宮医療大学, 保健医療学部, 講師 (10712002)
松熊 秀明 森ノ宮医療大学, 保健医療学部, 准教授 (70518638)
堀川 奈央 森ノ宮医療大学, 保健医療学部, 助教 (80784701)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 映像教材 / 鍼 / 鍼灸師教育 / 超音波診断装置 |
研究実績の概要 |
施術において鍼の深部組織における状態を観察することは出来ず、術者の感覚に委ねられている。養成校教育においても、技法の違いによる組織への影響を適切に説明することは難しい。我々は鍼刺激下の組織変化について超音波診断装置を用いて画像化し、鍼の多様な技法が組織に与える影響を映像教材とすることで、教育の質を高めることができると考えた。これにより、他の医療職に対して説明できる、質の高い有資格者の育成を目指す。 鍼の技術には深度変化や回旋・振動などを駆使した多くの技法がある。今年度は数種類の代表的な技法に限定して組織変化を映像化し、サンプル教材の作成を目標とした。第一に超音波診断装置の使用に関して、臨床検査技師の指導を仰ぎながら熟練を目指した。鍼の位置変化を観察するだけでなく、ドップラー法を用いた筋硬度変化の測定法の修得にも努めた。最も問題となったのは直径0.2㎜の鍼を捉える事であり、この技術向上に時間を要した。筋腹内に鍼を刺入して上下に動かす技術(雀啄法)での筋組織の動きについては収集を終えた。刺入した鍼を一定時間留める技術(置鍼法)では、鍼の先端を筋膜部分に留置する場合と、筋内に留置する場合の筋硬度変化を測定した。筋組織の変化は侵害受容器の興奮と関係することが予測されたため、被験者の感覚情報(鍼灸治療では得気と呼ぶ)も同時に調査した。筋硬度の変化については8例を検討し、筋膜および筋中のいずれも刺入前後の筋硬度に有意な差は認められなかった。(筋膜Pre 3.14±0.29 Post 3.07±0.41 p=0.49、筋中Pre 3.01±0.29 Post 3.17±0.40 p=0.22)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度は、超音波診断装置を用いて鍼を刺入する際の筋組織の状態と・筋硬度変化を観察・撮影し、教材を作成する計画であった。最初に研究代表者が超音波診断装置の使用に熟知する必要があった。また、生体内の鍼の動きを超音波診断装置によって連続的に映し出すことが難しく、時間を要した。映像の撮影時には、大学に所属する臨床検査技師の協力も得たため、時間の調整が必要となった。撮影を予定している技法は5種類であるが、鍼を組織内で上下動させる雀啄法、鍼を一定時間留置する置鍼法の2種類に留まった。 一方で、鍼を一定時間留置する部位を筋膜・筋内に分類し、刺入前、刺入直後、5分後、10分後と継続して撮影および筋硬度測定を各8例において終えることができた。鍼灸治療は、障害組織、特に筋硬結がある部位や圧痛点に行うことが多いが、健常成人において反応部位を絞ることなく、単純に刺入・留置するだけでは筋硬度の低下は認められず、逆に硬度が増す例が多く認められた。この事実は、従来鍼を刺入すると筋弛緩(筋硬度の低下)が起こるとされている内容とは相反する。これが障害部位や反応部位への選択的刺激で無かったからなのか、また技法の選択に誤りがあるのかは不明である。鍼施術の技術を教材化することが第一目的ではあるが、その経緯において鍼の組織に与える影響に関する問題点が抽出されつつある。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の研究については、以下の2点に焦点を絞り、研究を継続していく。 まず、予定していた5つの技法のうち、未撮影の3技法について映像データの蓄積と編集を進め、教材を作成完了させる。新型コロナウイルスによる授業日程の変更があり、他の年度と同じ時期に評価をすることは多少困難であるところではあるが、1-3年次に開講される鍼実技科目において教材を用い、技法に対する理解度が高まるかについて検証を進める。また、映像教材視聴における問題点の指摘も受け、年度後半に修正用の映像撮影を行う。作成した教材は、最終年度に複数の養成校において学生の視聴を依頼し、教育効果の検証を進める。この過程と同時に、各技法を行うことによる筋硬度の変化を継続的に観察し、単に技法による組織の動きを映像化するだけでなく、筋硬度を低下させる技術的条件についても検討し、教材に組み込むことを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
超音波診断装置購入の際、購入額に変動があったことに加え、研究の遂行の遅れによって物品の購入を見合わせたため、使用額が減少した。次年度以降、教材作成過程において必要となる物品購入費に使用予定である。
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