研究課題/領域番号 |
19K03020
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
尾関 基行 武庫川女子大学, 生活環境学部, 准教授 (10402744)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アクティブラーニング / トークンエコノミー |
研究実績の概要 |
本研究では、アクティブラーニングの学習者が進捗や成果をソーシャルメディアへ発信し、それに対するインターネット上での反応を“評点”とする新しい学習評価方法に挑戦している。これを実現するためには、まず前段階として、学習者がソーシャルメディアに継続的に発信する必要があり、また、その発信に対して多くの人から反応してもらうことが必要となる。初年度は主にこれらの目標達成に向けて、申請者のゼミの活動を対象アクティブラーニングとして実施した。 まず学習者の継続的な発信に関しては、ゼミ活動の毎週の進捗報告をブログで行うようルール化したことで7割方の学生が定期的な発信を継続している。ブログを更新したことは各人のTwitterでも告知し、また、そのTwitterアカウントでも進捗状況や勉強している内容などをこまめに発信するよう学習者に指示した。Twitterは短文であるため発信頻度が重要だが、現在はInstagramなど動画像の発信が中心でテキストの発信に慣れていない学習者が多いことや、逆に私用アカウントで日常的に発信している学習者は研究用アカウントに切り替える手間が発生することなどから、Twitterによる情報発信はあまり軌道に乗っていない。 次に、学習者の発信情報に対して反応してくれる人たち(フォロワー)に関してであるが、ソーシャルメディアを始めただけではフォロワーを獲得することは難しく、発信内容がアクティブラーニングの進捗となれば尚更である。学習者が個別に情報発信してもフォロワーを獲得することが難しいことから、本研究では学習者に同じグループ名を名乗らせることで「集団」として認知度を高める方策を取った。純粋なアクティブラーニングの内容(プログラミング教育など)に加えて、グループのインターネットラジオを実施するなど工夫し、多い学習者では100人を超えるフォロワーを獲得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究を実施するためには、まず、アクティブラーニングの学習者が進捗や成果をソーシャルメディアに継続的に発信するスタイルを確立する必要がある。その上で、ソーシャルメディア上にある程度固定化された評価者グループを確保しなくてはならない。現在はこれらの課題に取り組んでいるところであるが、十分に達成できているとは言い難い。 その理由としては、アクティブラーニング(本研究ではゼミ活動の内容)の進捗や成果をソーシャルメディアに継続的に発信しつづけるためにはそれなりの反応(コメント・いいね・拡散)が欲しくなるが、評価者グループが形成されていない初期段階では反応がなくても情報発信を継続する忍耐が必要であり、学習者の多くはその壁が乗り越えられないことが考えられる。 また、本研究ではゼミ活動をアクティブラーニングの題材としているが、COVID-19の影響で春季休暇以降のゼミ活動が完全オンライン化してしまったことによる失速もある。そもそも本研究の提案手法はオンライン教育との親和性が非常に高い(完全オンラインでも成立する)のだが、今回はアクティブラーニングの内容としてフィジカルコンピューティングを取り上げていたため、オフラインで集まってものづくりする必要があった。2020年4月以降はプログラミングなど、オンラインで完結するゼミ活動に切り替えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で実現すべきことは、1. ソーシャルメディアへの発信によるアクティブラーニングの学習報告スタイルの確立と評価者グループの確保、2. 学習報告への評価者の反応に対する報酬としてのトークン自動付与システムの構築、3. 評価者へのトークン配布機能、及び、評価者と学習者の間の双方向トークン送付機能の追加、4. 学習グループ内でのトークンのやりとりによる協働的アクティブラーニングの実践となっている。 「現在までの進捗状況」で述べたように、現在は主に1の部分に取り組んでいる段階にある。ソーシャルメディアにおける反応が十分に返ってくるようになるまでの初期段階の壁については、評価対象とする教育プロジェクト自体をフォローする評価者グループを数年かけて形成していくことで、いずれは学習者が情報発信を始めた初期の段階から反応が返ってくるような関係性を形成できると考えている。ゼミ活動の例でいえば、先輩たちが築き上げた評価者との関係を後輩たちが引き継ぎ、世代を経てその評価者グループを大きくしていく。当初は学習者に情報発信を強制する必要があるが、最初から十分な反応が返ってくるようになれば強制の必要性は弱まっていくと予想される。 もう一つの課題は、ブロックチェーン技術を取り巻くこの1年の法的な問題である。日本ではカストディ規制が実施されることとなり、ブロックチェーントークンを保持・管理するウォレットをシステム内部に持つことができなくなった。したがって、外部のウォレットツールを使える人にしか評価者になってもらえない。この問題を一時的に回避するため、ひとまずはブロックチェーン技術を使わずにトークンを表現することにする(トークンをシステム内の単なる変数値として扱う)。これについては外部ウォレットツールのUI改善やウェブブラウザとの融合によっていずれ解決されると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
ブロックチェーン技術に関するワークショップに参加することを予定していたが、当該技術を取り巻く社会的情勢の関係で想定よりも実施されず、所属機関から支給される旅費で賄えたため。また、COVID-19の影響により、年明け以降の本研究での主な経費であるアクティブラーニング活動が抑えられたため。
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