本研究の目的は、社会の科学技術化とグローバル化の急速な進展に呼応して科学技術倫理教育の重要性も増すばかりであることを踏まえ、学習者(学生)や教員の科学技術倫理への積極的・能動的姿勢の涵養を可能とする、デザイン思考(DT)の手法を用いた科学技術倫理教育プログラムの開発に向けた実証的研究を行うことである。令和5年度の研究実績は以下の通りである(当初の研究期間は2019~22年度の4年間を予定していたが、研究進捗の都合により研究期間を1年間延長し、2023年度までとなった): 1)英国レスター大学から研究者を招聘して「企業倫理と技術者倫理統合の必要性:国連グローバル・コンパクトと持続可能な開発目標の視点から」をテーマに科学技術倫理セミナーを開催した。グローバル化が急速に進む社会において技術者個人が意思決定をする際に求められる視座に関して、技術者個人のミクロな視座と社会全体を俯瞰するマクロな視座の融合が必要となること、そこで重要になるのが組織レベルからの考察であり、(ミクロレベルの)技術者倫理と(組織レベル、すなわちメゾレベルの)企業倫理の統合が求められることが指摘され、そのような「融合」「統合」にDTのアプローチが有効である可能性が示された。 2)本研究課題の成果発表を兼ねて、国内外で開催された国際学会で発表した。「日本の」モノづくり、「日本の」科学技術の考察や、技術者倫理を「リベラルアーツ」として捉えることの意味・意義について、有益な知見が得られた。 3)シンガポール理工学院主催のデザイン思考を用いた教育活動におけるファシリテーション法に関する研修プログラムに参加し、実践的な知見を得た。 4)放送大学科目「共生のための技術者倫理('24)」の教材作成に協力した。
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