研究課題/領域番号 |
19K03041
|
研究機関 | 立教女学院短期大学 |
研究代表者 |
田中 功一 立教女学院短期大学, 幼児教育科, 准教授(任期制) (10413006)
|
研究分担者 |
辻 靖彦 放送大学, 教養学部, 准教授 (10392292)
小倉 隆一郎 文教大学, 教育学部, 教授 (60177201)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ピアノ個人練習 / 練習時間 / 演奏分析 / 見える化 / 練習方略 / スキル学習支援システム / 演奏の見える化 / 保育士幼稚園教諭養成 |
研究実績の概要 |
保育者及び教職の現場では歌う場面が多いため、保育・教職養成校には歌の伴奏を担うピアノ技能教育が求められる。多くの養成校ではピアノ初心者は半数以上を占め、指導方法の工夫が課題になっている。個人練習はピアノ授業にとって重要だが、個人練習の内容は初心者や教員には把握しにくい。これまで初心者の個人練習の内容及び質は十分に解明されてこなかった。先行研究においても、個人練習におけるテンポ・音量・演奏回数・反復回数・ミスタッチ率の定量的分析は見当たらない。ピアノ授業カリキュラムの構築にとって個人練習の質の解明は欠かせない。本研究では、個人練習の実時間の音データを収集して定量的に分析する仕組みを作り、ピアノ初心者の個人練習の内容を調査し、問題点を整理し、学習者へフィードバックする。さらにデータを整理して練習プロセスを解明し、初心者の練習傾向を明らかにする。 2019年度の研究概要は、①調査項目の策定、②予備調査の実施、③調査装置の開発、④予備実験の実施、⑤調査協力依頼の準備の5点であったが、⑤については新型コロナ感染の影響のため依頼を延期して依頼内容の変更を検討している。①~④までは計画通りに進められた。 ①調査項目は、個人練習の実時間において演奏のテンポ・リズム・音量・演奏回数・反復回数・ミスタッチ率とした。次年度からこれらを定量的に分析する。②予備調査では調査項目について音データを可視化した結果、練習状況が把握できる可能性を得た。③調査装置は、筆者らが以前の研究において開発した分析装置、これは対面授業において学習者の演奏を分析する装置だが、これをアンドロイドスマートフォン用に開発することにより、学習者の自宅での練習を分析可能な装置の開発を進めた。実用可能な段階まで開発を進めることができた。④予備実験は2019年7月から8月に被験者2名について教師が対面する状況で実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、①調査項目の策定、②予備調査の実施、③調査装置の開発、④予備実験の実施、⑤調査協力依頼の準備の5点について研究を進めた。進捗状況は、⑤については3月に調査協力依頼の予定であったが、新型コロナ感染の影響のため依頼を延期した。2020年度前半に依頼の時期と内容について変更を検討する予定である。 進捗状況の詳細は、①~④までは計画通りに進められた。①調査項目は、MIDIデータは、演奏のテンポ・リズム・音量・演奏回数・反復回数・ミスタッチ率とした。②予備調査では、調査項目について音データを目視により確認した結果、練習状況が把握できる可能性を得た。③調査装置は、筆者らが以前の研究において対面授業用として開発した分析装置をアンドロイドスマートフォン用に開発することにより、学習者が自宅で行う個人練習の全データを分析する装置の開発を進めた。2019年度では実用可能な段階まで開発を進めることができた。④予備実験は2019年7月から8月に被験者2名について教師が対面する状況で実施した。 進め方は、個人練習を自宅で30分間実施する想定で、研究室においてデータを採取し、後日インタビューを実施した。結果は、1) 音データの視覚化により個人練習状況の様子が把握できた。2) 教員による初学者の演奏の聴取から1)との一致が確認できた。3) 練習後のインタビューから、学習者の練習の意図及び目的を把握することにより、1)の状況との関連性が把握できた。4) 筆者らが開発したVSPPによる音データ分析装置の本研究での有効性が示された。 以上1)から4)の結果、ピアノ初学者の個人練習の状況を客観的に把握することにより、初学者の練習方略が明確になる可能性が示された。詳細は論文「ピアノ初学者の練習方略の明確化を目的とした演奏の収録とインタビュー調査」において発表した(2020.3)。
|
今後の研究の推進方策 |
アンドロイドスマートフォン用の調査装置の開発は、2019年度から開始し、2020年度中に保育士教職養成校の学習者を対象とした運用を目指している。その仕組みは、学習者が自宅での個人練習において、MIDI出力付きのピアノとアンドロイドスマートフォンをUSBケーブルで接続して、練習開始から終了までの全てのMIDIデータを送信し、研究者側がWebサイト経由でデータをサーバーに蓄積し、個人練習のデータを分析するものである。認証システムの導入により、複数の養成校、及び複数の教員グループでの運用が可能になる。試験送信を含めた装置の開発及び実用は2020年度内を目指している。 調査協力依頼の準備については、新型コロナ感染防止対応のため養成校での業務負担が増していることを考慮して、2019年度の協力依頼を延期し、2020年度の実施としたが、その後も感染が終息しない影響が続いているため、今後の実験が予定通り進められない事態も視野に入れる。また、研究代表者の所属先の変更により養成校での実験が行える環境が少なくなるため、研究協力者を1名加えて実験を進めることを予定している。 具体的には、実験の規模の縮小と方法の見直しを検討する。調査協力依頼について、コロナ感染対応により養成校の授業形態が変化しているため、申請書に示した学会所属の複数の教員に対して予定していた実験依頼を変更し、本研究に新たに加わる研究協力者が所属する養成校の複数の学生を対象として実験を進める予定である。
|