研究課題/領域番号 |
19K03041
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研究機関 | 放送大学 |
研究代表者 |
田中 功一 放送大学, その他の部局, 客員研究員 (10413006)
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研究分担者 |
辻 靖彦 放送大学, 教養学部, 准教授 (10392292)
林 麻由美 東京福祉大学短期大学部, こども学科, 講師 (60823169)
小倉 隆一郎 文教大学, 教育学部, 教授 (60177201) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ピアノ個人練習 / 練習内容 / 練習時間 / 練習の質 / 保育者養成 |
研究実績の概要 |
保育者養成校にはピアノの授業がある。本研究はその授業の前後に位置づけられるピアノ個人練習の内容を把握する取り組みである。その方法として、2020年度はピアノ初学者2名の個人練習の実時間のすべての音データを収集して定量的に分析し、被験者アンケート及び半構造化面接を経て個人練習の傾向を確認した。続く2021、2022年度は前年度と異なる2名の個人練習を対象とした。これらの結果、個人練習の内容が教員と学習者に共有され、これまで学習者が独りで進めてきた個人練習を教員が客観的に捉えることが可能となった。 これまでの研究概要は、①2019年度から独自開発を進めてきたアンドロイド・スマートフォン・アプリである調査装置「PianoEL」を使用した個人練習の全MIDIデータの収集と練習時間等の検出、②2021年度から開発を進めてきた、ピアノMIDIデータから任意の部分について検出する仕組み「楽曲推定」による演奏曲目の推定と練習概要の検出、③これら①及び②の検証と改善の提案、以上である。実験の方法は、新型コロナ感染対策のため当初の計画を修正した結果、対面からオンラインによる実験とし、2020年度及び2021年度に実験協力者を毎年度2名に絞り、使用楽器を統一して実施した。これらの対応により研究は概ね修正した計画通りに進められた。 前述①では、個人練習のMIDIデータ全体を概観して演奏時間及び練習の構成を把握した。また、②では、予め指定した複数曲について、実際に練習した曲名を特定し、どのような練習内容(何回弾いたか、どこを弾いたか等)であったか把握した。また、これら得られた情報を確認するため、演奏録音を聴いて確認し、半構造化面接による聴き取り及びアンケートにより「楽曲推定」の精度を検証した。その結果、個人練習の内容はある程度顕在化された。これにより、授業の進行が効果的に進められる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナ感染対策のため当初の研究方法の計画を一部修正し、研究期間を一年延長して2022年度までとすることにより、当初の目的をおおむね遂行することができた。個人練習を対象にした実験では、教員との非対面によるオンラインによる実施としたため、実験の主要な部分は問題なく進められた。半構造化面接も対面からオンラインに変更したが、問題なく実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
アンドロイド・スマートフォン用の独自開発の調査装置「PianoEL」について、付加機能の開発を進める。次の通り検討している。①練習中の演奏した曲目の推定について、曲目数を増やすことにより多様な練習へ対応する。②一曲一回の練習における弾き直しや演奏のつまずきを画像から推定する装置について、練習内容の更なる詳細な情報を得る。③楽譜上の任意のポイントを選択することにより、演奏内容のより詳細な状況を把握する。④他の教員、さらに他の保育士教職養成校を対象とした運用を目指す。 具体的には、①について、複数の曲を特定するアルゴリズムによりある程度リストアップした曲目からの推定する仕組みの「PianoEL」への実装を検討する。曲目推定にあたり、予め蓄えた複数曲のMIDI情報と実際の演奏とのマッチングを行った。曲が概ね理解できる程度の演奏では、画像から曲目が推定できた。今後、曲目を増やす。②について、Excel画面上にMIDIデータのシーケンスがドットで示され、全体を外観すると画像のように示された。一曲一回の練習全体が示され、その画像から、部分練習、片手練習、及び演奏のつまずきなどが推測できた。今後は、独自開発のVSPPと連動することで演奏内容の分析を目指す。③について、任意のポイントを指定することで、その曲の楽譜上にもポイントが示され、さらに選択すると練習音の再生やVSPPの分析が示される仕組みの開発を検討する。④について、セキュリティ対策により検討が可能となる。 このような流れから次のような遷移が考えられる。 練習曲目の推定、練習全体の傾向を表示、楽譜上を特定することで練習の方法及び演奏の傾向を表示、練習回数・練習時間・演奏のつまずき回数などの集計、特定した部分の音再生、特定した部分のVSPP分析、以上について開発し、システムの改善を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、実験協力学生の参加が少なくなり、実験の規模が縮小され、年間2名となったこと。実験の方法が対面ではなくオンラインになったこと、これらにより実験計画を変更したため。また、実験を一年延長して2022年度まで実施する希望を提出し、研究期間の一年延長が認められたため。
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